200人以上が視聴、有識者や教育現場の第一人者が推進の方策を議論
「外あそびを推進する会」は、すべての子どもたちが身近な環境で外あそびができる社会の実現に向け、政策的な働きかけや啓発活動を行う任意団体です。今年6月には、国会議員勉強会と共同で作成した政策提言を、加藤勝信官房長官に提出しました。(https://kodomo-sotoasobi.com/jisseki/)
本シンポジウムは、提言内容の実現に向けた第一歩として、子どもの発育や外あそびの重要性を専門とする有識者や、現場で外あそびの推進を行う第一人者を招き、今後の展望や推進における課題について、議論を行いました。オンライン配信されたシンポジウムの内容は、下記リンクからご視聴いただけます。「外あそびを推進する会」は、200人以上の参加があったこのシンポジウムを起点に、民間企業、国会議員、政府機関、民間団体との連携を取りながら、外あそびの推進を進めていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=LkbeuOOBz2w
シンポジウムは、井上信治内閣府特命大臣(健康・医療戦略担当)の挨拶に始まり、続いて「外あそびを推進する会」の顧問である小倉將信衆議院議員より、6月に提出した政策提言の概要について説明がありました。その後、京都ノートルダム女子大学の石井浩子教授による基調講演では、過去約20年間にわたる外あそびの減少傾向とその原因、コロナ禍における加速、それによる子どもたちの身体的成長や社会性の育成に対する負のインパクトについて、報告がありました。
続いて、子どもの健全な成長における外あそびの重要性について、早稲田大学の前橋明教授と、筑波大学の平岡孝浩准教授より講演がありました。前橋教授からは、生活リズムの夜型化、自律神経機能の低下、疲れやイライラ感、「キレやすい」など、学業や社会活動に悪影響を及ぼす症状について、近年子どもや若者の間で増加が見られること、外あそびがその改善に貢献することについて説明がありました。
平岡教授からは、近年の児童における近視急増の現状について、衝撃的な最新の調査結果を引用した報告がありました。この状況は、外出抑制やデジタルデバイスの利用増加をもたらしたコロナ禍においてさらに悪化しており、教育現場でのICT化もすすむ中、目の健康への対策が急務であることが示されました。平岡教授は、国家的に子どもの屋外活動を推奨し、近視抑制に貢献した諸外国の例を紹介し、日本においても同様の政策をとることを提案しました。
シンポジウムの主題である今後の推進施策や課題については、NPO法人放課後NPOアフタースクール代表理事の平岩国泰氏、株式会社Deportare Partners代表の為末大氏、公益社団法人MORIUMIUS(モリウミアス)フィールドディレクターの油井元太郎氏の3名が登壇しました。
放課後NPOアフタースクールは、子どもの個性を伸ばす貴重な時間である放課後に、学校施設を使い、企業や地域ボランティアを巻き込んで、様々なプログラムを提供しています。平岩氏は、外あそびに必要とされる「時間、空間、仲間」(3つの間、サンマ)を提供できる効果的な取り組みである一方、十分な人材確保や安全管理のために政府による予算確保と、学校現場における責任問題への対応が必要であると訴えました。
続いて為末氏からは、少子高齢化が進む日本でこそ、子どもを中心とした政策づくりや取り組みが重要であること、ケガや事故に関する責任問題をはじめ、外あそび推進における課題の多くは、社会の誰もが「公共の場」に責任を持たず、互いに押し付けあっていることから生じているのではないか、という問題提起がありました。
MORIUMIUSは、被災地で廃校となった校舎を再利用し、子どもたちに自然体験活動や、持続可能な生活体験を提供する施設です。油井氏は、最近の調査結果を引用し、自然体験が子どもの社会性やメンタルヘルスにもたらす好影響を説明したうえ、都心にいても実践できる自然との触れ合いや、さらにその機会を増やすための都市開発における工夫の必要性などについて、提案を行いました。
最後に、「これだけ重要な外あそび推進が、これまでなぜ推進されて来なかったのか?」、「それを変えるには今何をすべきか?」をテーマに、登壇者による意見交換を行いました。一点目に、都市化やテクノロジーの浸透、共働きの増加がすすむ中、身近な環境で子どもが外あそびや自然体験をできるための施策について、議論がありました。魅力的な公園づくりやコミュニティガーデンの増加といった環境整備に加え、周りの大人の工夫が必要であること、一方で、近所の散歩や、自身が幼少期に体験した伝承あそびなど、気負わずにできることから始める重要性について、意見がありました。
また、公共のルール作りに頼るばかりではなく、日本社会の特徴である信頼関係を活かし、公共の場への責任感、コミュニティ意識、子ども中心の社会づくりを目指す意識が重要である、とのコメントもありました。学校施設の活用推進については、予算の確保に加えて、教育長の意識改革が重要であるとの指摘がありました。
締めくくりとして、コロナ禍における外あそびの注意点と、今後の会の活動予定について、「外あそびを推進する会」代表発起人の前橋教授より説明がありました。継続的な啓発活動に加え、政策提言の実現に向けて、提案事項ごとに有識者を集めたワーキンググループを設立し、具体的な議論を進めていきます。そして最後に小倉將信衆議院議員より、こども庁での対応を含む今後の政府での取り組みについて、決意表明をいただきました。
「外あそびを推進する会」は、すべての子どもが身近に外あそびを行える社会の実現に向け、連携先の企業や民間団体を募りながら、具体的な検討・活動を続けていきます。
子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会について
「外あそびを推進する会」は、子どもの身体、こころ、そして脳の健全な発育に寄与するという、外あそびの重要な効能に注目し、日本の子どもたちが、身近な環境で外あそびを行うことができるよう活動を行う任意団体です。近年、生活環境の変化やテクノロジーの浸透によって、子どもが外あそびをするのに必要な空間・仲間・時間(3つの間:サンマ)が不足し、多くの子どもたちにとって、日常的な外あそび体験の確保が難しくなっています。一方、外あそびは、身体的・社会的・知的・精神的・情緒的な成長に重要な役割を果たし、健全・健康な発育に加え、社会の未来に貢献する、自立した人間形成に貢献するものです。
本会は、外あそび時間が減少し、あそび場の確保が難しくなっている現状を改善するため、外あそびの効能について調査、啓発を進めるとともに、政府に働きかけ、すべての子どもが身近に外あそびを行える環境を整備することを目標に設立されました。外あそびを推進する諸分野の有識者、先進事例を持つ地方自治体、民間団体、NPO法人などと連携し、活動を進めています。
URL:https://kodomo-sotoasobi.com/
発起人(敬称略):
- 前橋明(代表発起人):早稲田大学 人間科学学術院 健康福祉科学科 教授・医学博士
- 石井浩子:京都ノートルダム女子大学 現代人間学部 こども教育学科 教授
- 為末大:Deportare Partners 代表、男子400メートルハードル 日本記録保持者
- 油井元太郎:公益社団法人MORIUMIUS 理事、キッザニア創業メンバー
- 小倉將信(顧問):衆議院議員
- ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ビジョンケア カンパニー(協賛企業)