コレラ危機:今後20年間でコレラ感染が倍増するリスク

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​世界保健機関(WHO)は、現在各地で発生しているコレラ危機が10億人以上を危険にさらすと警鐘を鳴らしています。水・衛生の国際NGOウォーターエイドは、コレラ危機を収束させるための長期的な解決策は水・衛生であるとし、「各国政府や世界のリーダーたちが水・衛生などのコレラ対策に積極的に取り組むことで、10億人以上の人々が直面する脅威をなくすことができる」と話します。

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気候変動、紛争、金融危機、人口移動―こうした混乱が、前例のない世界的なコレラ危機をもたらし、これまで長い間、コレラの発生がなかった国々でも大規模な流行を引き起こしています。コレラの感染制御のための世界対策・専門会議(Global Task Force for Cholera Control :GTFCC)は、最悪の事態はまだ続くと警告。早急に対策を講じなければ、人口増加と急速かつ持続可能ではない都市化により、今後20年間でコレラ患者が倍増する可能性があると推測しています。

WHOは、今まさにこの史上最悪のコレラ危機を経験しているのはマラウイであると指摘。マラウイではこれまでに53,464人のコレラ患者が確認され、合計1,643人が死亡(致死率3.07%)。また、隣国のモザンビークでも、8,532人のコレラ感染者が登録され、合計54人が命を落としています(いずれも2023年3月13日時点の数字)。

こうした状況をうけて、WHOは、世界43か国の10億人がコレラ感染の危険にさらされていると警告しています。この警告は、今年3月22日の「世界水の日」前後にニューヨークで開催されるコレラ対策に関する2つの重要な会議-水・衛生に関するGTFCCの年次会議と1977年以来初の国連水会議(UN Water Conference)- を前に出されました。

ウォーターエイド・バングラデシュの保健アドバイザーであるヌルラ・アワル博士は、GTFCCの水・衛生ワーキンググループの議長を務め、世界のリーダーたちに対して、コレラ根絶のために必要な水・衛生サービスに緊急的な資金が必要であると呼びかけています。また、ウォーターエイド・イギリスのシニア保健政策アナリストであるアリエル・ナイランダーは、次のように述べています。

「コレラは古くからある病気ですが、今日、世界で最も脆弱なコミュニティに新たな脅威を与えています。かつて、コレラの大流行は世界のあらゆる地域を襲い、何百万人もの人々の命を奪いましたが、多くの人々が水・衛生サービスを利用できるようになったことで、コレラの発生を阻止することができるようになりました。21世紀において、コレラによる死は回避可能であり、開発途上国の多くでいまだにコレラが発生していることは、世界の不平等を明確に示すものです。

水・衛生改善への投資は、コレラ危機を収束させるための唯一の長期的な解決策です。残念なことに、経口ワクチンだけでこの大流行を止めることはできません。もし各国政府や世界のリーダーたちが新型コロナウイルスと同じようにコレラ対策に取り組む姿勢を示せば、10億人以上の人々が直面する脅威をなくすことができるのです」

WHOのコレラ対策責任者であるフィリップ・バルボーザ博士も、次のように水・衛生の重要性を強調しています。

「予防が重要です。世界人口の半数近くが、安全に管理された衛生設備を利用できません。安全な飲料水と衛生設備へのアクセスは、国際的に定められた認められた人権です。これらの権利を実現することがコレラ根絶にもつながります」

しかし、予防のために、そしてコレラ根絶のために水・衛生が重要であるにも関わらず、マラウイでは、住民の4分の3が適切なトイレを利用できず、約30%の人が清潔な水を自宅の近くで利用することができません。また、モザンビークでは、半数近い人々が清潔な水を使うことができず、10人に6人は適切なトイレを使えません。

さらに現在、サイクロン「フレディ」がアフリカ大陸南部に上陸し、マダガスカルとモザンビークで壊滅的な洪水が発生しています。限られた給水設備が壊れたり、水源が汚染されたり、環境が不衛生になったりする結果、さらにコレラがまん延するリスクが高まっています。

気候変動によって、気温や降水量、異常気象の発生頻度や気象パターンが変わることで、コレラを含む水系感染症の発生リスクが高まり、これまでのコレラ対策が水の泡となる恐れがあります。気候変動による異常気象が深刻化し、かつ頻発するなか、気候変動にレジリエントな水・衛生サービスとインフラへの資金確保が急務です。

ウォーターエイドは、世界水の日ならびに国連水会議を目前にした今、各国政府に対し、このコレラ危機の解決のために、水・衛生の改善に最優先で取り組むようにー特に水・衛生に向けた資金確保、そしてハイレベルな政治的コミットメントを呼びかけています。21世紀である今、コレラによる死は回避可能であり、開発途上国の多くでいまだにコレラが発生している不平等は早急に解消されなければなりません。

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