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認定NPO法人ブリッジフォースマイルでは、2020年から10年計画で『退所者トラッキング調査』を行っています。今回は、120施設(2902人分)の回答が得られました。
11月の「児童虐待防止推進月間」によせて
児童養護施設退所者(ケアリーバー)が自立していく上での経済面・メンタル面の課題全国の児童養護施設へのアンケート調査で見えてきたこと
『退所者トラッキング調査』は、2020年から 10年計画でスタートした調査です。今回は、全国47都道府県にある576の児童養護施設にアンケートを送付。120施設(2902人分)の回答が得られました。
退所者の進学・就労の実態、支援制度の利用状況、住まいの状況、親族との関係、性別による傾向など、さまざまな側面から得られた回答結果を報告書(74ページ)にまとめています。
◆全国児童養護施設 退所者トラッキング調査2024 【概要版】【詳細版】 ➡ こちら
昨年に引き続き、退所後の支援(アフターケア)体制を掘り下げています。
2024年4月「児童自立生活援助事業」提供範囲が拡大され、年齢に関わらず措置解除者でも緊急時に再度施設等で支援ができるようになりましたが、新制度の導入は施設によってまちまちです。
また、今回はじめて、メンタルに関する通院についても調査を行い集計しました。
【アンケート調査で見えてきたこと】
・7施設に1施設はアフターケア担当職員がいない。
・アフターケアは施設の役割と明記され、改善傾向ではあるが、まだ担当職員がいない施設が14%ある。
・アフターケア体制が十分とれなかった施設は、「児童自立生活援助事業」の制度活用に消極的で、施設間格差の広がりが懸念される。
・本調査ではじめて、大学等への進学率が、前年より減少となった。その背景として、給付型奨学金に後押しされた「とりあえず進学」ではなく、本人の意向を見極める傾向が出てきたと推測。
・離職率は高く、高校卒業直後に正社員就労した人のうち、1/3 が1年3か月後に離職。
・大学等の進学者の中退率は、経済的支援である「奨学金」と「自立支援貸付金」を利用しているかしていないかでは、約2倍の差がある。
・自立の上でもっとも重要なリスク対策である健康保険の加入は、施設側で加入状況を把握していない人が18.8%、未加入は6.1%。依然として高い数値。
・退所後の住まいとして、親元に戻る割合は5年前の2019年度以降、減少傾向。代わって支援者との同居が増加。
・退所後、精神科や心療内科に通院している割合は、全国の若者(15-24歳)平均が3.1%に対して、退所者は24.2%。
・大学等進学先を中退した人は、中退していない人に比べて、精神科や心療内科への通院経験が約3倍
【全国児童養護施設 退所者トラッキング調査2024】
調査実施者:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
調査対象:全国の児童養護施設 576件
調査時期:2024年6月1日(土)~7月30日(火)
調査方法:Web回答
有効回答数:児童養護施設数120(有効回答率 21%)/ 退所者数 2,902人
調査目的:
全国の児童養護施設を退所した人の進学や就労の状況、施設の自立支援の現状などを把握し、自立に向けた支援の課題を明らかにすること
主な調査内容:
退所年や高校卒業の有無とその後の進路について、「退所時」もしくは「18歳の3月末時点」と、「現在」における状況の調査
・児童養護施設のアフターケア体制
・児童養護施設退所者の高校卒業後の進路
・大学等進学者の中退率
・高校卒業後の就労形態、離職率
・支援制度の利用状況
・退所時の同居者
・就労者の勤務先からの住宅支援
・退所前の特筆すべき出来事
・性別による傾向
・施設とのコミュニケーション状況
・メンタル面での課題
※昨年度のトラッキング調査はこちら