ビジネスと人権に関するシンポジウム

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公益財団法人人権教育啓発推進センター

近年、企業による人権尊重の必要性について国際的な関心が高まっています。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」は10年の節目を迎え、また、持続可能な開発目標(SDGs)においても、その遵守の重要性が確認されています。日本でも、2020年10月に「「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020ー2025)」が策定されました。この機会に、ビジネスと人権について皆さんも考えてみませんか?

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基調講演1
ビジネスと人権に関する国際的動向

国連ビジネスと人権作業部会 委員(元委員長)
アニタ・ラマサストリさん

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先進国として責任ある行動を

国連ビジネスと人権作業部会では「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて、市民社会、企業、政府と連携し、企業の責任ある行動の推進に努めています。同原則は、企業がその活動によって人権への負の影響が生じるのを予防または軽減するよう求めています。また、もし人権侵害が生じてしまった場合に、被害者が確実に救済へアクセスできるような措置を求めています。

具体的に取り組むべき事項を挙げると、児童労働の禁止などの「子どもの権利の保護」、「働きがいのある人間らしい仕事」、「新しい技術の発展に伴う人権」など多岐にわたりますが、いずれも重要な課題です。また、コロナ禍からの回復においても、関係者の心身の健康と人権を守るために、企業の責任ある行動が求められるでしょう。

世界の先進国では人権デュー・ディリジェンス(社内だけでなくあらゆる関連組織において人権リスクの軽減・予防と被害者の救済措置に取り組むこと。以下、人権DD)の義務化が進んでおり、例えばドイツ、フランス、ノルウェーでは法制化されていて、これらの国々で活動する世界中の企業に良い影響を与えています。

日本でも昨年、「ビジネスと人権」に関する行動計画が策定されましたが、これはゴールではなく、始まりに過ぎません。地域的・国際的リーダーである日本が、アジアの諸外国をけん引することを期待しています。

基調講演2
「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)について

SDGパートナーズ有限会社 代表取締役CEO
田瀬 和夫さん

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人に対するリスクが問題

アニタさんから「ビジネスと人権に関する指導原則」についてお話がありましたが、人権を尊重する責任が、企業に求められるのはなぜでしょうか。その理由の一つとして、1990年代以降、開発途上国に進出したグローバル企業が、当該国の事情を悪用して人権上問題のある活動をしていたことが挙げられます。こうした状況への対策として、専門家たちが長年にわたる研究の末に国連人権理事会に提出した文書が「ビジネスと人権に関する指導原則」の元になっているのです。

指導原則自体に法的拘束力はありませんが、人権保護に取り組むNGOによる監視体制が整いつつありますし、多くの投資機関も、人権侵害のリスクがある企業を投資対象から外すようになっています。つまり「企業が存続していくためには人権尊重の活動が必須」という時代なのです。

ここで言う人権侵害のリスクとは、人権を侵害される人に対するリスクです。例えば、 児童労働に従事して教育を受けられなかったら、人生の様々なチャンスが失われる可能性があり、また、強制労働によって命を落とすことさえあります。これらを放っておくと、人権を大切にしない企業と認識され、結果的に企業に対するリスクになるでしょう。

人権侵害のリスクを低減し、人々の命を守ることが第一であり、その結果が企業の持続的な成長にもつながる。この順序を念頭に、各企業の皆さまには早急に対策を進めていただきたいと思います。

パネルディスカッション

外国人労働者向け相談窓口を設置
グローバルな視点で問題解決目指す

【パネリスト】
味の素株式会社 サステナビリティ推進部 社会グループシニアマネージャー
芝草 哲郎さん

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弊社が2018年から人権DDに取り組み始めたとき、まずグローバル事業全体について第三者による人権影響評価を行い、リスクが高いと判断されたタイのサプライチェーンにおいて、聞き取り調査等を行いました。すると、政府や国際NGOの働きかけで児童労働の問題は解決されつつある一方で、移民労働者に関するリスクがあることが判明しました。そして現地では、そのような状況への対策として、移民労働者が母国語で困り事や労働環境の改善要求ができるスマートフォンアプリと、多言語対応の電話相談窓口が導入されていました。

そこで、弊社もそれに倣い、NGOと連携して同様の仕組みをグループ会社の外国人労働者向けに導入しています。現在の対象はグループ会社内のみですが、今後はサプライチェーン全体に展開していく予定です。

 企業の人権保護活動に関しては、経営上のリスク回避の観点だけでなく、企業価値の向上においても重要だと感じています。コロナ禍で現地に赴けない中でどのように取組を進めるのか、人権尊重に関する情報開示はどのような形で行うべきなのか…など、まだまだ課題は多いですが、試行錯誤を重ねてより良い環境づくりに努めます

原材料生産国の支援に注力
サステナブルな経営を目指して

【パネリスト】
明治ホールディングス株式会社 サステナビリティ推進部 企画グループ長
山下 舞子さん

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弊社では昨年、サステナビリティ活動に関する責任者「チーフ・サステナビリティ・オフィサー」を設置し、グループ全体で人権DDを推進する体制を強化しました。また、人権DDの考え方に基づいた「サプライヤー行動規範」を策定し、サプライヤー各社と協力して調達の持続可能性等に関するアンケート調査を実施。その結果を分析しているところです。

また、チョコレートを作る会社として、カカオの原産国に社員が赴き、現地のニーズに即した支援活動を行っています。そして、現在取り扱っているカカオのうち、サステナブルカカオと定義しているものは約40%ですが、これを2026年までに100%にすることを目標に掲げて取り組みを進めています。

 サステナビリティについてはノウハウの蓄積がないところから開始しなければなりませんでしたし、社内の理解を得ることも必要でした。経営とサステナビリティを融合することが大切だと考えています。人権尊重の活動で発見した課題を社会的ニーズとして捉え、新しい価値創造につなげられる可能性も視野に入れて、前向きに取り組んでいきます。

取引先を巻き込み人権活動を推進
他社と協力関係を築き成果を出したい

【パネリスト】
イオン株式会社 環境・社会貢献部 イオンサプライヤーCoC事務局
新井 裕二さん

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弊社は大きなサプライチェーンを持っており、そこには非常に多くの方々が関わっています。イオンでは「イオンサプライヤーCoC(Code of Contact=行動規範)」を定め、プライベートブランド「トップバリュ」では、行動規範の内容を説明する機会を設けて「遵守宣言書」を取り交わしています。このCoCは、2019年にサプライヤーの人権DDの実施を踏まえて改定したものです。

外国人技能実習生の人権リスク低減にも力を入れています。2020年から、監査対象の最終加工工場に外国人技能実習生の雇用がある場合、管理責任者だけでなく実習生の方にもインタビュー調査を必須としています。弊社プライベートブランドのサプライチェーンで働いている従業員なら誰でも利用できるスマートフォンアプリ等を利用した相談窓口も開設しました。

サプライチェーンの皆さまは、私どものお客さまでもあります。皆さまの人権が守られることは事業の前提ですから、取引先の方々と約束をして一緒に人権を守っていくということは小売業であるイオンにとって事業活動の根幹だと考えております。

【当日の模様をYouTubeで配信しています】
※以下の画像をクリックすると、 YouTubeに移動します
(2021年9月8日~2022年9月8日まで(予定))

【「Myじんけん宣言」募集中!】

「Myじんけん宣言」とは、企業、団体及び個人が、人権を尊重する行動をとることを宣言することによって、誰もが人権を尊重し合う社会の実現を目指す取組です。
https://www.jinken-library.jp/my-jinken

【人権相談はこちら】
セクハラやパワハラ、家庭内暴力、体罰やいじめ、インターネットでの誹謗中傷、差別など、「自分の悩みは人権侵害かも?」と思ったら、一人で悩まず、ご相談ください。秘密は守ります。相談は無料です。

・みんなの人権110番 0570-003-110(ゼロゼロみんな の ひゃくとおばん)
・子どもの人権110番 0120-007-110(ぜろぜろなな の ひゃくとおばん))
・女性の人権ホットライン 0570-070-810(ゼロナナゼロ の ハートライン)
・外国人のための人権相談 0570-090911
https://www.moj.go.jp/JINKEN/index_soudan.html

【インターネット人権相談】
インターネットでも人権相談を受け付けています。
パソコン・携帯電話・スマートフォン共通 https://www.jinken.go.jp

●法務省人権擁護局ウェブサイト https://www.moj.go.jp/JINKEN
●YouTube 法務省チャンネル https://www.youtube.com/MOJchannel
●YouTube 人権チャンネル https://www.youtube.com/jinkenchannel
●人権ライブラリー https://www.jinken-library.jp 

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