鍵はPPA 国と民間それぞれの工夫で再エネ倍増へ
■講演内容(要約)
1.FITとは何だったのか?
2012年に開始したFIT制度(Feed-In-Tariff:固定価格買取制度)の目的は、①再エネ導入量を増やすこと、②再エネ産業を育成すること、の二つです。日本の再エネ導入量はFIT開始前の5.3GWから、2020年には64GWまで増加し、①は一定の成功をおさめたといえるでしょう。
②について、当時再エネ業界が抱えていた課題はコストの高さでした。そこで国は、コストを下げるために人為的なバブルを起こし、多くのプレイヤーを集め、毎年買取価格を下げて競争を煽ることで、低コストで再エネを増やせる強者だけが生き残る仕組みを導入し、再エネ産業を育て上げようとしました。それがFITです。
2.新時代の幕開け
2021年は世界中で脱炭素の気運が高まった年ですが、EV転換や炭素税の導入など、先陣を切ったのはヨーロッパでした。そしてあの中国でさえ脱炭素宣言。さらにアメリカもバイデン政権に変わり、脱炭素路線へ転換しました。そんななか、動きを加速させたのはGoogleやAppleといったグローバル企業です。特にAppleは協力企業である日系グローバル企業にも、脱炭素を急ぐよう発破をかけました。脱炭素の流れは日本にもやってきます。2020年10月、菅前首相は所信表明演説で、脱炭素化に向けて動き出すことを宣言。そして、再エネ比率2030年までに36~38%まで引き上げることを目標に掲げました。
日本企業も生き残りをかけて、大手を中心に続々と脱炭素を宣言しています。企業にとって再エネの調達は単なる環境問題ではなく、経営課題へと変化したのです。
3.日本の問題点とは?
2030年までに再エネ倍増という目標を掲げた日本ですが、ここ数年太陽光発電所は増えていません。それは土地と送電網に課題があるからです。
日本は国土が狭く山地の多い国です。地代や造成コストが安い土地はすでに開発し尽くされています。
また、適地の送電網にはこれ以上空きがなく、発電所がつくれても系統連系ができません。電力間の送電線も弱く、適地(地方)から需要地(都会)への送電には限界があります。
つまり、国が掲げた再エネ倍増という目標と、これ以上の再エネ発電所増設は困難という現実との間にギャップがあることが、日本の大きな問題点というわけです。
4.これからに向けて ―解決策と事例―
FIPを経て、これからやってくるのがアフターFIT時代です。再エネの売り方はPPAに変化していきます。FIT時代、発電事業者は発電した再エネを一般電力に売るだけでした。一方、アフターFIT時代(PPA)では、発電するだけなく、その先にある需給調整や需要家(売電先)まで考える必要があります。
また、再エネを倍増させるためには、先述した日本の課題の解決が不可欠です。まずは土地の課題。「太陽光だけのための土地」ではなく、これからは造成費用のかからない農地や、屋根、駐車場、水上といったような「○○×太陽光」が成立する土地を「発見」していくことが重要です。当社は衛星データとAIを組み合わせ、再エネ適地を発見するシステムを独自に開発し、日本中を解析しています。
続いて送電網の課題。N-1電制やノンファームの適用など、すでに国が対策を進めており、今後もあらゆる手を打つことが予想されます。
そんななか、民間からも送電網の課題にアプローチすべく、当社は電力会社間をつなぐ試みなど、さまざまな挑戦をしています。
アフターFIT時代とは、国と民間がそれぞれ工夫を凝らし、再エネ倍増という目標達成に向けて共に取り組んでいく時代ということです。
課題はたくさんありますが、生き残った強者の皆様、共にこの国の再エネを増やしていきましょう。
■afterFITについて
グリーンに特化し、発電・送電・売電の電力3事業を展開するグリーン電力会社。自社で開発から保守管理まですべてを一気通貫で行える強みを生かし、発電事業領域で成長。その実績を生かし、AIを活用した発電適地探しや大規模蓄電池をアルゴリズム制御するシステム開発など、グリーン電力の課題解決に力を入れている。売上高(2021年4月期)190億円。国内18拠点のほか、ベトナム、インドネシアにも進出。
【株式会社afterFIT 会社概要】
創業 :2016年10月
代表取締役: 谷本貫造
資本金 :5億2,400万円
本社所在地:東京都港区芝大門2-4-6豊国ビル
事業内容 :グリーンエネルギーに関する課題解決事業(電力事業、太陽光事業、風力事業、メディア事業)
URL :https://afterfit.co.jp/
◇しろくま電力(ぱわー)公式webサイト:https://shirokumapower.com/