大自然の中でリトリート体験ができる熊野古道の宿「SEN.RETREAT TAKAHARA」
熊野古道の参詣道「中辺路ルート」沿いの山間に位置する「SEN.RETREAT TAKAHARA」は、日常の自分と距離を置き、大自然の中でストレスをリセットする「リトリート体験」ができる無人運営の宿として、2021年10月8日に開業しました。
「SEN.RETREAT」ブランドの宿は2022年末までに、中辺路ルート沿いに他3カ所が順次開業する予定で、SEN.RETREATAKAHARAはその第一弾となります。
この度、地元の梅・みかん農家が近年悩まされてきた獣害を解決する一助となるべく、捕獲された猪をしゃぶしゃぶ鍋としてご提供するプランを導入します。
地元の獣害対策の活動や尽力されている方々の思いを知っていただける冊子を宿に配置し、ジビエを味わうだけでなく、その背景まで宿泊客の方に理解していただける取り組みも行います。
- 猪鍋プラン概要
お鍋の具材には猪のロースやバラ肉のほか、龍神しいたけ(田辺市龍神村産)や高級食材「白いきくらげ」(田辺市伏菟野産)などをご用意。お出汁は減塩鰹節(和歌山県すさみ町産)をご提供しています。
調味料は、梅果汁を使用した梅ポン酢(和歌山県上富田町産)や、ゆず果汁を使用したごまだれ(和歌山県紀の川市産)を備えており、風味豊かで多彩な“オール和歌山”の味をお楽しみいただけます。
プラン名:【贅沢】オール和歌山にこだわった"猪肉しゃぶしゃぶ"
料金:1泊2食付きで18,700円/人(大人4名様の場合)
※宿泊代/オールインクルーシブドリンク/お菓子・おつまみ込み
ご予約はこちらより〉〉https://reserve.489ban.net/client/sen-retreat-takahara/0/detail/535287
- 猪鍋を食べたお客様の感想
提供開始に先立ち、宿泊客の方に猪鍋を試食していただき、感想を伺いました。
Aさん:まず、お肉が予想外においしくて食べやすかった。ジビエについては、「おいしくないけど殺しちゃったから食べましょう」というネガティブなイメージを持っていたけど、まったく違いました。梅やかんきつ類のポン酢とお肉の相性が良かったです。
Bさん:今日食べた猪肉は脂が少なくあっさりとした味わいで、お箸がどんどん進みました。
「捕獲された動物を食べるのがかわいそう」という声もあるけど、ジビエを食べることは地方の農業を守ることにもつながると実感しました。
Cさん:野生だとしっかり運動しているからか、お肉は弾力があって食べ応えがありました。脂や灰汁も浮かないので、ヘルシーなんだと思います。きくらげもプリプリかつシャキシャキでおいしかったです。
Dさん:しいたけは肉厚でジューシーで、しいたけの概念が変わりました。地元の方が命を無駄にしないよう大切に捕獲したジビエを食べさせてもらうことは、なかなかない有意義な機会でした。
- 田辺市における獣害の現状
SEN.RETREAT TAKAHARAにジビエを届けているのは、地元農家のメンバーが獣害対策を行うために立ち上げた「株式会社日向屋」(田辺市上芳養)です。
田辺市上芳養地区の基幹産業は梅とみかんの栽培ですが、近年は獣害に悩まされてきました。梅は鹿に新芽を食べられ、木の成長が悪くなります。みかんは猪が食べ、100㎏を超える猪が木にのしかかり折れてしまうこともあります。
この課題を解決すべく、地元農家のメンバーが罠の狩猟免許を取って狩猟チームを立ち上げました。
最初の1年のみで猪や鹿が120頭ほど捕獲できたものの、立ち上げ当初は現在のようにジビエ処理施設も解体師もおらず、獲物はバットでたたき殺すしかありませんでした。鹿や猪が痛そうに鳴く姿に、地元農家のメンバーはだんだんと精神的な負担を抱えるようになりました。
激増した個体数を減らし、命を無駄にしない策が他にないか考えた結果、ジビエの解体ができる施設と、解体できる人材がを誘致することとなり、2018年に解体施設「ひなたの杜」が建てられました。
「日向屋」公式サイト〉〉 https://team-hinata.com/
「ひなたの杜」に地元住民が建てた鳥獣供養塔
- 獣害対策に取り組む地元住民の思い
■「日向屋」代表・岡本和宜さん
解体施設をつくってからは、獣害の件数は8割ほど減りました。また、罠の狩猟免許を取る方も増えました。解体はプロに任せて、できるところは自分たちでやろうという意識が広がりました。
解体施設は死んだ個体が運ばれてくるため、地元住民からの反対が予想されたものの、「農業を守るためなら」と皆さん快く受け入れてくれました。
今、解体を担っている湯川さんは日本で3本の指に入る解体師だと私は思います。それほど、彼の技術は素晴らしい。
獣害対策は大成功を収めましたが、一番大事にしているのは鹿や猪を絶滅させないことです。むやみに捕獲するのではなく、共存共栄を目指しています。
現在はかなり被害が減ったので、人間が暮らし、農業を行う地域に入ってくる獣のみ捕獲しています。
「獣害」と言われるような状況を作ったのは人間です。高齢化により耕作放棄地が増えていますが、人間が手入れしていない土地に鹿や猪が降りてくるのは当たり前。獣害は裏を返せば、人間の責任でもあります。
こうした経緯を踏まえて、僕たちが処理したジビエをおいしくいただいてほしい。人間は命をいただいて生きていることを、ジビエを通して感じてもらえれば幸いです。
■解体師・湯川俊之さん
ジビエは本来ほとんどの個体がおいしいですが、血抜きなどの正しい方法を知らないまま処理されたジビエは臭みが出てしまいます。
猟師や農家が罠で鹿猪を捕獲すると、私はすぐに現場に駆けつけ止め刺しを行います。これが、私がジビエの解体を行う上での大きな特徴です。多くの人は心臓を刺しますが、私は首の頸動脈を切り、心臓を動かしたまま血抜きをする。こうすると血の出方が全然違います。
銃で撃つ際も気を付けています。例えば、肩を撃ったら肩ロースが食べられなくなる。頭を打ったらお尻まで弾が抜けて、すべてダメになる。こめかみのあたりをいかに打ち抜くかが重要なんです。
2021年は特に捕獲した鹿猪が多くて、11月は100頭は獲りました。いろんなところから連絡が入り、地域を駆け回っています。
- SEN.RETREAT TAKAHARAについて
「RETREAT~歩いて、遊んで、夢中で休んで~」をコンセプトに、日常の自分と距離を置き、 大自然の中でストレスをリセットする「リトリート体験」ができる無人運営の宿です。
宿泊客が集まることができる広々としたリビングや、ほんのりと木の香りが漂う和室3室を備えています。大自然に囲まれた屋外のデッキテラスでは焚き火を楽しむことができ、夜間には瞬くような星空を、早朝には神秘的な雲海を見ることもできます。
最大10人が宿泊できる一棟貸しのお宿となっており、ご友人やご家族など気心の知れた方々とゆっくりとお過ごしいただけます。
所在地 和歌山県田辺市中辺路町高原 1966
客室数 3室(最大宿泊人数10人)
付帯設備 キッチン、炊飯器、冷蔵庫、食洗器、電子レンジ 駐車場付き