今、世界中で地球温暖化の危機が叫ばれており、ニュースはさまざまな悪影響が起きていると報じています。
では、もし次のような話を聞いたら、みなさんはどう思うでしょうか?
●ホッキョクグマは絶滅しない
●太平洋の島国は水没しない
●台風や豪雨は激しくなっていない
きっと、「ウソだ」と考えるはずです。しかし、これらはどれも本当なのです。たしかに地球は温暖化していますが、ニュースで報道されているような危機的な状況ではないのです。
たとえばホッキョクグマの頭数(下図)はかつて1万頭まで減りましたが、今では4万頭まで増えています。これは、人間が射殺せずに保護するようになったことが大きな理由で、動物保護の一大成功事例であるといえます。
また、太平洋のサンゴ礁の島には、海抜が数メートルしかないツバルやキリバスなどがあります。これらの国は地球温暖化によって海面が上昇することで「水没の危機」にある、といわれています。
しかし、サンゴは動物であり、海面が上昇するとその分、速やかに成長するので水没しません。ある研究の観測データによれば、対象とした27のサンゴ礁の島のうち86%で面積は増大、または安定していて減少したのは14%でした。実際にキリバスでは過去70年、首都のあるタラワ島などの面積は増えていました。
そして、台風は下のグラフからわかるように、そもそも増えていません。
くわえて、台風は最大風速が毎秒33 メートルを超えると「強い」以上に分類されますが、下のグラフのとおり、「強い」以上の台風の発生数も発生割合も増えていません。
また豪雨についても、大規模な水害を引き起こすような大雨の雨量に増加傾向は見られません (下図) 。
このように「ニュースで報じられていること」と「データをもとにした事実」は大きく異なることがあります。もちろん地球の環境を考えることは重要です。同時に「データをもとに世界を冷静に見る習慣(=ファクトフルネス)」をつけることも大切です。
1月21日(金)に発売される書籍『15歳からの地球温暖化』(扶桑社)では、一般に公開されているデータをもとに、地球温暖化の影響によって起こるといわれているさまざまな問題の実態を紹介。それがどれくらい危機的な状態なのか、観測や統計をもとにあらためて考えてみましょう。
本書は中学生や高校生でも読めるように、データや科学的知見をわかりやすく説明しています。
「SDGs」「COP」などニュースでよく目にする言葉の解説もしているほか、「なぜ、地球温暖化の誤った定説や情報が広まってしまったのか」なども紹介しています。
大切なことはデータ、それも計算機によるシミュレーションではなく、観測・統計の結果をよく理解して、それにもとづいて考えることです。この本が地球温暖化について「みんなが言っているから」ではなく、自分の頭で考え、行動するためのきっかけになるはずです。
- 著者プロフィール
杉山大志( すぎやま・たいし)
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。東京大学理学部物理学科卒、同大学院物理工学修士。電力中央研究所、国際応用システム解析研究所などを経て現職。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、産業構造審議会、省エネルギー基準部会、NEDO 技術委員等のメンバーを務める。
産経新聞「正論」欄執筆メンバー。著書に『「脱炭素」は噓だらけ』(産経新聞出版)、『SDGs の不都合な真実』(編著、宝島社)、『地球温暖化問題の論考—コロナ禍後の合理的な対策のあり方』『地球温暖化のファクトフルネス』『脱炭素のファクトフルネス』( 以上、amazon.co.jp他で電子版及びペーパーバックを販売中) など。
- 書誌情報
タイトル:『15歳からの地球温暖化 学校では教えてくれないファクトフルネス』
著者:杉山大志
発売:2022年1月21日(金)
定価:1,540円(本体1,400円+税)
判型:A5判
ISBN: 978-4-594-08994-8
発売元:株式会社 扶桑社
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