環境移送技術のイノカ、化学メーカーのDIC、人工生態系を用いた藻類由来天然素材フィコシアニンの有用性研究を開始

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〜地球の健康に寄与するための共同研究をリバネスがサポート~

株式会社イノカ(本社:東京都港区、代表取締役CEO:高倉葉太、以下「イノカ」)、DIC株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役 社長執行役員:猪野 薫、以下「DIC」)、株式会社リバネス(本社:東京都新宿区、代表取締役グループCEO:丸 幸弘、以下「リバネス」)は、DICが保有する微細藻類スピルリナ由来の天然青色色素「フィコシアニン(※)」が海洋生態系に与える影響について共同研究を開始します。

環境移送技術のイノカ、化学メーカーのDIC、人工生態系を用いた藻類由来天然素材フィコシアニンの有用性研究を開始のサブ画像1_3社共同記者会見の様子(左から、リバネス:丸CEO、DIC:田川GM、イノカ:高倉CEO)3社共同記者会見の様子(左から、リバネス:丸CEO、DIC:田川GM、イノカ:高倉CEO)

本共同研究では、リバネスの研究サポートのもとイノカのコアテクノロジーである海中のモデル生態系を閉鎖空間(=水槽)に再現する「環境移送技術」を用いて水槽内に人工的にサンゴを生育させ、フィコシアニン添加条件下における白化現象の抑制効果等について検証します。

サンゴ礁(サンゴが形成する地形)が海洋に占める面積は全体のわずか0.2%ですが、サンゴ礁海域には海洋生物種のうち約25%(約10万種)が棲息しており、海の生物多様性を支えています。また、人間の社会生活を支える上で必要な護岸効果や漁場の提供、建築や生活道具の材料といった重要な役割を果たし、さらに近年では医薬品への活用も期待され、その経済価値は年間で推定3750億ドル(日本円で約43兆円)以上にものぼると言われています。

しかし、近年の気候変動に伴う海水温の上昇により、20年後にはサンゴ礁の70〜90%が消滅する可能性が高いと予測されています。高温の熱ストレスや光ストレスは、サンゴに共生している褐虫藻の光合成系を阻害し、活性酸素種を過剰に発生させ、その結果、サンゴ体内から褐虫藻が喪失してサンゴ自体の骨格が白く見える「白化現象」を引き起こします。白化が進行するとサンゴは死滅し、サンゴに支えられている海の豊かな生態系も崩壊の一途をたどります。今後、海の生物多様性やそこから生まれる経済価値を持続可能にしていく上では、サンゴ礁生態系の保全は世界的に喫緊の課題となっています。

近年のサンゴ研究によると、褐虫藻の熱ストレスや光ストレス耐性を向上させる共生バクテリアが単離され、この共生バクテリアが、天然色素の一種であり強力な抗酸化作用をもつ物質を生合成していることが報告されました。本共同研究のシーズとなる、スピルリナから抽出した光合成青色色素「フィコシアニン」にもすでに抗酸化作用が認められており、欧米を中心にヒトの健康への寄与に関する基礎研究や臨床研究が進められ、投稿論文数も飛躍的に伸び始めています。さらに、ヒトのみならず、フィコシアニンを添加した水産飼料を用いて、飼育魚の成長率や体色(皮膚の総色素量)等の変化を調査する報告もみられています。

そこで、今回はイノカのコアテクノロジーにより水槽内に再現した人工生態系を用いて、DICが保有するスピルリナ由来の天然青色色素「フィコシアニン」がサンゴに与える影響について検証を開始することとなりました。フィコシアニンの抗酸化作用や青色の水溶液がもたらす光フィルター効果によりサンゴの白化現象を抑制する可能性、また、サンゴがフィコシアニンを吸着することによる赤色の蛍光発色効果及び特定波長のカットによる光ストレス抑制の可能性等について研究を進めます。

将来的には、海洋生態系の中で生育する魚の成長・体色に与える影響や、フィコシアニンの酸化還元反応を利用した海洋生物の病原菌に対する殺菌効果の検証等を通じて、海洋生態系保護素材としてのフィコシアニンの可能性を追究します。

今後、環境移送技術をもつイノカと藻類由来有用成分の研究開発を行うDIC、新規研究開発のサポートを行うリバネスの3社が連携することで、フィコシアニンの新たな有用性を発見するとともに、人の健康のみならず、生態系を含めた地球の健康に寄与するための研究開発を推進していきます。
 

 

 

  • ※フィコシアニンについて 

環境移送技術のイノカ、化学メーカーのDIC、人工生態系を用いた藻類由来天然素材フィコシアニンの有用性研究を開始のサブ画像2_フィコシアニンフィコシアニン

スピルリナなどのシアノバクテリアと呼ばれる藻類がもつ光合成色素の一種。フィコシアニンにより水中でも赤色光を効率的に吸収して、二酸化炭素と水から生命維持に必要な栄養素を作りだすことができます。2013年に米国食品医薬品局(FDA)より食品用天然系青色素として初めて認可されて以降、天然色素化が急速に進む欧米市場を中心に需要が飛躍的に高まっています。近年では、抗酸化作用などの機能性を有することが報告されています。

                                              以 上
 

  • DIC株式会社について

環境移送技術のイノカ、化学メーカーのDIC、人工生態系を用いた藻類由来天然素材フィコシアニンの有用性研究を開始のサブ画像3

世界トップシェアを誇るファインケミカルメーカーであるDICは、1970年代に世界で初めて微細藻類スピルリナの商業用生産に成功して以来、安全かつ高品質なスピルリナの生産技術の追求と、人々の健康や豊かさに寄与するための研究開発・商品化に取り組んできました。近年では、スピルリナが有する光合成色素タンパク質「フィコシアニン」に抗酸化作用などの機能性が見いだされ始め、人類の健康に寄与する可能性が示唆されています。DICでは自社ファームで生産したスピルリナから、有機溶媒の処理工程を使わない環境負荷を低減したフィコシアニン成分の抽出方法を確立し、国内で初めてフィコシアニンを用いた食品の機能性表示取得に成功しました。

関連リンク:
■国内初、スピルリナ由来“フィコシアニン”を関与成分とする製品が機能性表示食品として届出受理
 https://www.dic-global.com/ja/news/2020/products/20200720110650.html
 

  • 株式会社イノカについて

「人と自然が共生する世界をつくる」というビジョンをかかげ、2019年に創業したベンチャー企業です。天候をはじめとする条件が日々変化する海の中のモデル生態系を閉鎖空間(=水槽)に再現することで、安定環境下でデータの取得を可能とする環境移送技術を活用して、海の見える化に取り組んでいます。モーリシャスでの重油流出事故においては、世界的に減少を続けているサンゴの保護など、地域の環境回復を目的とした調査・保全研究に協力、さらに、2022年2月16日には、世界で初めて真冬のサンゴ人工産卵に成功しました。

関連リンク:
■東大発・環境移送ベンチャー「イノカ」、商船三井と共同でモーリシャスの環境回復・地域貢献へ
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000047217.html

■世界初 真冬のサンゴ人工産卵に成功
 https://corp.innoqua.jp/news/2022/02/16/

  • -株式会社リバネスについて

研究者集団であるリバネスは、「科学技術の発展と地球貢献を実現する」という理念のもと、大学や企業から生まれる科学・技術と異分野の知識を組み合わせ、地球貢献に資するプロジェクトを創造するサイエンスブリッジコミュニケーターとして活動しています。2014年より、アジア最大級のディープテックベンチャーの発掘育成プラットフォームを手がけ、イノカの創業以前より研究開発体制の強化や大企業連携による共同研究開発の推進、教育活動のサポート等を行ってきました。

関連リンク:
■株式会社イノカにマリンテックグランプリ2021最優秀賞を受賞したKUAU 上田正人氏がCTOとして参画
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000047217.html

 

 

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  • 関連リンク

フィコラボ:https://phycolab.jp/ 天然素材『フィコシアニン』の可能性を見てみよう!

環境省 サンゴ礁保全の取り組み

https://www.env.go.jp/nature/biodic/coralreefs/reference/mokuji.html?fbclid=IwAR0sJzFrNhyJy7I5nC5jsxSwuV98NlZrnLTF_jGBKas0nrEbycNrEgdPJYc

 

 

 

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