「脱炭素社会」の進展、企業の14.8%が自社事業に「プラス」

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スマートシティ、企業の4割超がエネルギー関連分野に関心

現在、脱炭素社会やスマートシティの構築など、持続可能で強靭な経済社会の実現に向けた動きが活発化してきている。こうしたなかで、電気自動車(EV)の推進や再生可能エネルギーへの転換などは政府や企業の主要なテーマとして掲げられている。

<調査結果(要旨)>

  1. 脱炭素社会の進展について、今後の自社の事業に「プラスの影響」とした企業は14.8%となった。他方、「マイナスの影響」とした企業は16.1%、「影響はない」は35.0%であった
  2. 電気自動車(EV)の普及について、今後の自社の事業に「プラスの影響」とした企業は13.4%となった。他方、「マイナスの影響」とした企業は14.9%、「影響はない」は40.7%であった
  3. スマートシティに関する興味・関心、「エネルギー、水、廃棄物分野」が42.7%で最高となった(複数回答、以下同)。以下、「防災分野」(32.8%)、「健康・医療・介護分野」(25.5%)、「自動走行・自動配送分野」(25.4%)、「金融分野」(20.0%)が続いた

※調査期間は2021年6月17日~30日、調査対象は全国2万3,737社で、有効回答企業数は1万1,109社(回答率46.8%)
※本調査の詳細なデータは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している

 脱炭素社会の進展や電気自動車の普及、それぞれ1割超の企業でプラスの影響
脱炭素社会の進展や電気自動車(EV)の普及は、今後の自社の事業にどのような影響があるか尋ねたところ、脱炭素社会の進展を「プラスの影響」とした企業は14.8%となった。他方、「マイナスの影響」とした企業は16.1%、「影響はない」は35.0%であった。

電気自動車(EV)の普及が自社事業に「プラスの影響」があるとした企業は13.4%となった。他方、「マイナスの影響」とした企業は14.9%、「影響はない」は40.7%だった。

「脱炭素社会」の進展、企業の14.8%が自社事業に「プラス」のサブ画像1_今後の自社の事業への影響今後の自社の事業への影響

また、「プラスの影響」では、「脱炭素社会の進展」「電気自動車(EV)の普及」ともに「電気・ガス・水道・熱供給」(それぞれ45.0%、40.0%)がトップとなった。また、「マイナスの影響」では、ガソリンスタンドなどを含む「専門商品小売」(それぞれ51.7%、49.0%)が最も高かった。

脱炭素社会の進展や電気自動車(EV)の普及に対して企業からは、「新技術に対し、自社の製品が活用される可能性が大いにあるため、先進的な発展を望んでいる」(非鉄金属卸売、和歌山県)や「新規参入の機会となる可能性が高く、今後取り組みを進めていきたいと考えている」(プラスチック製品加工、富山県)といった前向きな意見があがっている。

一方で、「化石燃料を主とするガス、灯油などを販売する自社にとって不安材料である。社員の雇用を守る上でも他分野の進出は考慮しなければならない」(燃料小売、福島県)や「自動車のEV化によって航続距離が短くなり、自社の配送距離に対応できるかが課題である」(一般貨物自動車運送、千葉県)、「EV化が普及した場合、自動車関連企業が軒並み立ち行かない事が想定される。自動車産業は裾野が広いため影響は計り知れない」(電子機器用部分品製造、青森県)といった、脱炭素社会やEV化に関する懸念要因をあげる意見もみられた。

スマートシティ、企業の42.7%が「エネルギー、水、廃棄物分野」に興味・関心
政府は、「総合イノベーション戦略2020」などに基づき、スマートシティへの取り組みを推進している。そのようななか、自社がスマートシティに関してどのような分野に興味・関心があるか尋ねたところ、エネルギー、上下水、リサイクルなどを地域内で最適管理するといった「エネルギー、水、廃棄物分野」が42.7%で最高となった(複数回答、以下同)。以下、災害の情報をリアルタイムで取得・発信し、迅速な避難・復旧を実現するといった「防災分野」(32.8%)が3割台で続き、ICTのデータ活用により、健康寿命を延伸することなどを含む「健康・医療・介護分野」(25.5%)、いつでもどこでも必要な移動・配送サービスを提供することなどの「自動走行・自動配送分野」(25.4%)、キャッシュレス社会を実現し、取引をデジタルで完結させるといった「金融分野」(20.0%)が続いた。

「脱炭素社会」の進展、企業の14.8%が自社事業に「プラス」のサブ画像2_興味・関心がある分野(複数回答)興味・関心がある分野(複数回答)

また、「エネルギー、水、廃棄物分野」は、『農・林・水産』(56.9%)や『製造』(50.0%)で5割以上となり、「防災分野」は『建設』(44.1%)が4割超となった。そのほか、「自動走行・自動配送分野」では『運輸・倉庫』(55.9%)、「金融分野」では『金融』(51.7%)がともに5割超となった。

各業界が得意とする分野において、特に興味・関心が高い傾向が表れた。

化石燃料を取り扱う企業、脱炭素の進展を不安視
本調査の結果、脱炭素社会の進展や電気自動車(EV)の普及は、影響はない、もしくは分からないとする企業が多くを占めている。しかし、それぞれ1割超の企業でプラスの影響があると考えており、今後の動きを事業拡大のチャンスと捉え、先進的な発展を期待する声もあがっていた。他方、マイナスの影響があるとみている企業もそれぞれ1割超とほぼ同程度となった。とりわけ、化石燃料を取り扱う企業では今後の進展を不安視している。

また、スマートシティへの取り組みの推進に対して、4割超の企業で「エネルギー、水、廃棄物分野」に興味・関心を持っているほか、「防災分野」も約3社に1社は興味・関心がある。

2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという政府目標にむけて、国や企業の取り組みは盛んになっていくであろう。いかなる企業も今から準備しておくことは重要となる。

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