目次
2022年8月20日(土)、21日(日) 富津市、千葉市、千葉テレビ放送株式会社
海と日本プロジェクトin千葉県実行委員会は、2022年8月20日(土)、21日(日)に千葉県内の小学生19名を集め、「江戸前ちば海苔広め隊」を結成し、海苔を徹底調査しました。本調査は、海苔養殖の現状・課題、海苔がどうやって作られるのかを学ぶほか、漁師飯を作って海苔の風味を体験するなど「海苔」をテーマにした体験型学習プログラムです。また、漁には欠かせない『天気情報』について千葉市のウェザーニューズ社で学習しました。 学習の成果は参加者がレポートにまとめて、発表しました。
このイベントは、次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
- イベント概要
・開催概要:千葉県で海苔の養殖が始まったのは1822年。現在の君津市で始まって今年でちょうど200年を迎えます。「色よし・味よし・香りよし」と言われ、品質が高い「江戸前海苔」は現在流通している97%が千葉県産で、海苔の養殖は千葉県の最重要漁業の一つです。しかし近年は地球温暖化による海水温の上昇や鳥や魚の食害による被害などで不作が続いていて、それに伴って担い手である海苔漁師の数も減り続け、この10年間で3分の1まで減少しています。そこで、品質の良い「江戸前ちば海苔」の伝統を守っていくためにも、千葉県の海苔養殖の現状や課題などを学び、海でいま起こっていることを理解し、今後について考えます。
・日程:8/20(土)8/21(日) 計2日間
・開催場所:富津市、千葉市、千葉テレビ放送株式会社
・参加人数:千葉県内の小学生19名
- 千葉県の海苔作りの歴史と海苔が出来るまでを学ぶ!
まずは、東京湾漁業研究所・富津埋立記念館にて、千葉県の海苔作りの歴史と海苔の生産方法を学びました。
千葉県の海苔の養殖は200年前に江戸(現在の東京都)の海苔商人だった近江屋甚兵衛さんによって上総人見村(現在の君津市)で始まりました。当時、千葉県の東京湾側には浅瀬の干潟が多く存在していて、海苔の養殖に適していることから、浦安や市原、木更津で協力者を探したが見つからず、 最終的に君津にたどり着きました。そして色々と試した結果、1822年(文政5年)に養殖が成功し、 やがて「上総海苔」は江戸で人気を呼び、各地に養殖が広がっていったのです。海苔の生育には適度の海面の昇降と、遠浅で波静かな海面、栄養豊かな川が注ぎ込む河口の汽水域が適しているため、江戸前と呼ばれる東京湾は最適です。現在、千葉県の海苔養殖は、三番瀬(市川市・船橋市)、盤洲干潟(木更津市)、富津岬周辺で行われています。
海苔養殖は種づくりから始まります。種は、貝殻の中で育つ糸状体で作られます。水温が下がると、カキ殻糸状体の中から海苔の種が出てきます。この種を海苔網に付着させる「採苗(さいびょう)」を行います。その後、大きさ1センチくらいまで育てた後、海苔網を冷凍庫で保管します。作業完了後、冷凍網を海に張り、海苔が15センチ程度まで育ったら刈り取りをします。千葉県では品質の良い海苔を生産するために、冷凍網技術を利用して、漁期中に網を4~5回張り替えるのが特徴です。なぜ品質が良いのか子供たちも納得している様子でした。
- 漁師飯「鉄砲巻」作りに挑戦!江戸前ちば海苔の味・香り・色を楽しむ
千葉県でも有力な海苔産地の富津では、漁師が仕事をする時に持っていくお弁当として親しまれてきたのが「鉄砲巻」。仕事中でも片手でサッと食べられるように作られたと言われています。全国各地に「鉄砲巻」と呼ばれる細巻き寿司はありますが、その多くは「かんぴょう」などの具が入っているのに対して、富津の鉄砲巻の具は「かつおぶし」です。また、すし飯ではなく、普通のごはんを使用しており、おかかおにぎりを細長くしたものと言えます。
江戸前ちば海苔の味・色・香りに子供たちは舌鼓を打ち、お代わりしていた子供もいました。
- 海苔加工場・養殖場を見学! ~海苔製品が出来上がるまで~
千葉県内のすべての乾海苔が集まるのが千葉県漁業協同組合連合会のり共販事業所です。集まった海苔を検査して格付け(ランク)をしたあと、海苔の卸売問屋に販売する「入札会」が開かれます。入札会では千葉県中の海苔卸問屋が集まります。 会場では入札会が始まる前に、それぞれ入念に海苔の品質を確認して値段を決めています。スーパーで販売される商品になるまでに、機械作業や手作業が加わっていることを目の当たりにして、興味津々に見学しておりました。
また、富津市内の漁港から、漁船で沖へ移動し、実際の海苔の養殖場を見学しました。想像したよりも大きい養殖場だったのか、子供たちは海の大きさを感じながら見学していました。
- 海苔すき体験! ~昔ながらの海苔づくりを体験~
千葉県漁業協同組合連合会のり加工事業所にて、海苔すきの体験を行いました。海苔職人レクチャーのもと、全員が海苔づくりの一部の工程を体験しました。子供たちは、昔ながらの製法を教えてもらうことで、先人の知恵を学習しました。200年もの海苔養殖の歴史に触れることで、人は海に支えられ続けているということを理解した様子でした。
- 天気×漁・流通 ビッグデータの活用法を学ぶ!
2日目は千葉市内にあるウェザーニューズ社を訪問し、近年の気候の特徴と海の関係について学びました。ウェザーニューズ社では24時間365日交代で、500人以上の気象のプロが世界の気象状況を監視しており、日本だけでも約2,500社と取り引きをしている業界最大手の気象情報会社です。海苔の種を育てる頃は、台風が来たり、急に暖かくなる頃と合わさるので、海苔が病気にならないよう天気を見ながら注意して育てていることを学びました。天気を予測し伝えることで、海の仕事をする人たちを守ってきたことを学び、感心していました。また、プランクトンが大量発生し赤潮が発生し、養殖に影響が出てしまうことも学びました。豊かな海を守るために、普段からごみを拾いたいと子供たちは発言していました。
- 海を表現!江戸前ちば海苔と千葉の海の関係をまとめました
最後にチバテレ本社にて、2日間の体験プログラムを通じて学んだことを班ごとに分かれて、新聞記事にしました。千葉日報の新聞記者の方を講師に迎え、記事(文章)の作成のコツやレイアウト、写真の選び方を教わりながら作成しました。自身で学んだことを周りの友達と話し合い、意見を集約して新聞づくりを行っていた様子はとても印象的でした。
また、江戸前ちば海苔を使ったメニューレシピを班ごとに考え、発表しました。海苔の風味を活かす相性の良い食材はないか、それぞれがアイデアを出しながら考えをまとめていました。
- 参加したこども・保護者からの声
・江戸前ちば海苔の昔ながらの作り方を体験することが出来て楽しかった。江戸前ちば海苔そして千葉の海を守っていくために、千葉の海苔を積極的に食べていきたいと思いました。
・千葉の海が汚れることで海苔の養殖に影響が出ていることを学んだので、日常からゴミを見つけたら拾っていきたいと思いました。
<団体概要>
団体名称:海と日本プロジェクトin千葉県実行委員会事務局
URL:https://www.chiba-tv.com/
活動内容:千葉の魅力を多くの方に伝え、海をもっと身近に感じてもらえるよう活動しています。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/