SDGs時代のための乳化技術の新規応用 ~ポーラ化成、世界的に権威ある化粧品技術者学会にて発表~

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乳化と分離の制御によるCO2排出と廃棄量の削減

ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)は、2022年9月19日~22日にイギリス・ロンドンで開催される第32 回国際化粧品技術者会連盟(以下 IFSCC)世界大会のポスター発表部門において、化粧品乳化物をリサイクルするための新技術を発表します。
この知見は、今後、ポーラ・オルビスグループの商品・サービスに応用されます。 

■論文タイトル
『SDGs時代のための乳化技術の新規応用 ~乳化と分離の制御による廃棄量削減~ 』
英文名:“New Application of Emulsification Technology for the SDGs Era ~Reducing waste through control of emulsification and separation~”
発表者: 木村 勇輝1、瀬田 啓一郎2、加治 恵2
1ポーラ化成工業㈱ フロンティアリサーチセンター、2ポーラ化成工業㈱ 製品設計開発部 内容物開発センター

■発表内容概要

【化粧品乳化物のリサイクルに挑戦】

 ポーラ化成工業では、環境負荷の低減に努めています。しかし、乳液やクリームなどの乳化物を作るには水と油を混ぜ合わせ安定な状態にするために加熱が必要で、CO2排出が免れません。また、乳化物は乳化剤によって水と油を混ぜ合わせているため、成分の分離・回収が難しく、使われなかった製品は廃棄を余儀なくされていました(補足資料1)。そこで今回、①製造時のCO2排出量と②乳化物の廃棄量を同時に削減するための、リサイクル技術開発に挑戦しました。開発の起点となったのは、これまで乳化物の安定化を追究してきた化粧品業界で、あえて「分離化を追究する」発想の転換です。

【濃度をスイッチとした乳化と分離の制御を実現】

 本研究を可能にしたのは、DIYコスメ用に自社で開発された特殊な乳化剤『M-ポリマー(補足資料2)』です。M-ポリマーは加熱をしなくても様々な油を乳化することができるため、製造時のCO2削減に有効でした。そのため、この乳化物においてさらに分離・回収ができればCO2削減と乳化物の廃棄削減を同時に達成できると考え研究したところ、M-ポリマーは低濃度では水と油を乳化できるが、高濃度では一時的に乳化できなくなることを見出しました。つまり、濃度を変えることで乳化と分離の自在な制御に活用できます。この特徴を利用して、分離した乳化物から、油やM-ポリマーといった構成原料の回収ができ、回収した原料を用いて再び乳化物を作製した際も、新品の原料による乳化物と同等の品質をもつことが確認できました。

 以上のことから、M-ポリマーの応用により『乳化物リサイクル』を達成できる可能性が新たに見出されました(図1)。これは、製造時のCO2排出を抑えるのみならず、使われなかったものはリサイクルして原料を無駄にすることなく循環させるサステナブルなモノづくりに貢献できると考えます。また、本研究の考え方は、化粧品のみならず乳化技術をカギとする他の分野でもリサイクルを実現させる可能性を秘めています。
 

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 ポーラ化成工業では今後も、革新的な技術開発を通じてサステナブルなモノづくりを実現し、肌も地球も美しい社会の形成を目指します。

【補足資料1】

 

一般的な乳化物の性質と問題点

 互いに溶けあわない水と油を均一に混合し、分離しないよう安定化させることを「乳化」と言います。乳化は、乳液やクリーム、クレンジングなど、化粧品に広く用いられる技術です。
 乳化をするためには、水と油の間を取り持つ「乳化剤」を用いるだけでなく、この乳化剤の働きを最大限に高め、より安定な乳化状態を作るための「加温工程」が存在しています。そのため、製造工程においてCO2を排出しています。
 また、乳化剤が水と油の間に強く結びつき、とても安定な乳化状態を構築しているため、成分を分離・回収することが非常に困難な状態にあります。このように複数の成分が混ざりあった乳化状態のままではリサイクルが叶わず、使われなくなった化粧品は廃棄が余儀なくされ、製造に用いたエネルギーや原料が無駄になってしまうという問題点があります。

 【補足資料2】

 

M-ポリマーの特徴的な乳化と分離メカニズム

 M-ポリマーは水溶液中で低濃度の場合(図2左)、小さなボール状の粒子になります。粒子には、サイズの違う者同士が吸着しやすい「ヘテロ凝集」という性質があります。M-ポリマーはこの性質を利用して油を乳化します。M-ポリマーの粒子は油滴の粒子よりずっと小さいため、油滴の表面に自然に吸着します。そのため、加温を必要とせず様々な油を乳化できます。
 一方で、M-ポリマーが水溶液中で高濃度の場合(図2右)、M-ポリマーはM-ポリマー同士で互いに結びつき、ジャングルジムのような大きな構造を作ります。この構造をとってしまうと、油滴の粒子とM-ポリマーの粒子のサイズの違いがなくなってしまうため、「ヘテロ凝集」による吸着が起こらなくなります。その結果、M-ポリマーは油滴の粒子から離れてしまい、最終的には分離状態になります。

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【補足資料3】 IFSCCについて

 IFSCC世界大会は、世界中の化粧品技術者・研究者にとって最も権威のある学会で、最先端の化粧品技術が披露されます。応募論文はIFSCCの厳正な審査を受け、選ばれたものだけに発表が許されます。今回は口頭で78件、ポスターではそれを上回る多数の発表が予定されています。

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