~実施報告~WWFやロンハーマンの取り組みもご紹介
当日は、豊島と2019年より「アパレル生産工程の水リスクへの対応」と「サステナブルコットンの普及」に関する連携協定を結ぶWWFジャパンの講演や、独自のサステナビリティ・ビジョンを掲げて注目されているロンハーマンより事業部長の根岸さんをお招きし、その取り組みをご紹介いただきました。
豊島からは、綿花商を祖業とし180年前から綿を取り扱うオーソリティとして、昨今の「サステナブルコットン」の需要の高まりや、様々な認証の構図、製品と綿花栽培での違いなど、今となってはなかなか聞きづらい基本的な話から最近のトレンド状況などをご説明いたしました。
またその中で、世界的にも主流になりつつあり、一般的にも目にすることが増えてきた「BCIコットン」についてもご紹介し、今後のアパレル業界内でのサプライチェーンの変化についてのお話や、消費者目線でもどのような部分に注目して製品を選択すればよいかの指針となる解説をいたしました。
トレーサブルオーガニックコットン「TRUECOTTON」やペットボトルのアップサイクル繊維をはじめとする各種サステナブル素材やスマートウェアなどを紹介する豊島2021-22AW展示会の初日となったセミナー当日は、お取引先様やメディア関係者含め、250名もの方にオンラインでご参加いただき、サステナブルコットンへの注目の高さを改めて感じることができました。
以下、当日の内容をご紹介いたします。
また下記URL内に、当日のオンラインセミナー動画を格納しておりますので、ご確認くださいませ。
▶ セミナー動画:https://bit.ly/cottonseminar_zoom
■名称:「サステナブル コットン セミナー」
<当日のプログラム>
・主催ご挨拶(豊島株式会社 風間光剛)
・地球環境は今どんなことになっているのか(WWFジャパン 安村茂樹様)
・オーガニックコットンとは?(豊島株式会社 田中哲平、平沢希久子)
・BCIコットンとは?(豊島株式会社 瀧本庄弥)
・これからのファッション~わたしたちは何からはじめたのか~(ロンハーマン 根岸由香里様)
・質疑応答
<登壇者>
・モデレーター:モデル / エシカルファッションプランナー 鎌田安里紗様
・WWFジャパン 自然保護(淡水・教育・PSP)室長 安村茂樹様
・リトルリーグカンパニー カンパニーオフィサー / ロンハーマン事業部 事業部長 兼 ウィメンズディレクター 根岸由香里様
・豊島株式会社
品質管理室長 風間光剛、二部一課 田中哲平、 営業企画室 平沢希久子、十二部一課 瀧本庄弥
【ポイント①】ここ数年で生産量増加!ますます需要が高まる「オーガニックコットン」と世界的に広がる「BCIコットン」とは!?
サステナブル素材への注目やSDGsへの意識の高まりもあり、「オーガニックコットン」を使用した製品や名称を目にする機会も格段に増えています。
180年前より綿糸を扱っている豊島では、現在でも綿花の取引において繊維業界でトップクラスの取り扱い量を誇ります。その中でも「オーガニックコットン」の需要は年々高まっており、オーガニックコットン繊維での生産量は2018年から2019年では23万9787トンで、前年比31%の増加、その前の2016年から2017年の年と比べると56%もの増加となっています。※1
※1引用元:TextileExchang「Organic Cotton Market Report 2020」
世界的に広がっている「BCIコットン」とは
「BCIコットン」とはBetter Cotton Initiativeの略で、世界最大のサステナブルなコットンの普及プログラムです。
一般的に「サステナブルコットン」と認められているものには、様々な機関がそれぞれの認証方法で基準を設け、商品や素材につけるマークの管理などが行われています。
コットンを生産をするうえで、環境への負荷を軽減しながら、農家の生産性も維持できる仕組みを作ろう、と考えられたのがこのサステナブル(=持続可能)な「BCIコットン」プログラムです。
BCI認証を受けた綿花は年々増えており、全世界のコットンの生産量の約20%を占めています。
→「BCIコットン」がとるマスバランス方式とは
複雑でとても長い、繊維製品の生産・流通のサプライチェーンの中で、オーガニックな栽培方法であるコットンを追跡し選択するのはとても難しいものとされてきました。原料である綿花栽培農家にとっても、環境に配慮したオーガニックコットンの栽培はコストや利益など、金銭的にも負担の大きいものでした。
BCIでは、「マスバランス方式」というシステムを導入し、膨大な流通量と複雑な既存のサプライチェーン全体を通し、各工程に関わるみんなで意識を変えていくことで、負担の大きかった栽培農家の生産性向上や収益も増加させるよう還元されていくという持続可能なプログラムとなっています。
“BCIコットン”という製品があるのではなく、BCIの定めるサステナブルな方法で栽培されたコットンに対し、BCCUというポイントが付けられます。そのコットンが、綿から糸、織物など、各工程を通る間も引き継がれ、BCIに加盟する小売業やブランドは、その繋がれてきたBCCUに対し対価を支払います。BCIを通じ、栽培農家への支援や、教育へと還元されていくシステムが「マスバランス方式」なのです。
農家だけが環境負荷を軽減するためのコストを負うのではなく、アパレル系商社、ブランド、リテーラー、などサプライチェーンに関わる全ての人の意識が変わることで、ファッションが環境に与える影響を軽減!
原料であるコットン栽培農家だけではなく、紡績や織物など生産する現場や、販売するブランド、さらには、消費者である生活者の皆さまにも、BCIを知ってもらい、よりベターな選択をしてもらうことで、農家の栽培環境が整えられていき、ファッションが抱える地球環境への負の影響も軽減していけるのではないでしょうか。
BCI加盟のブランドや小売りは、欧米のグローバル展開をするブランドを中心に年々増加しています。
BCIでは、水の排出や農薬使用など、毎年細かなレポートも出されており、関わる全ての人が当事者となり持続させるという強い想いで運用されています。
豊島は2017年より綿花におけるBCIのメンバーシップに加入しています。
【ポイント②】近年著しい水の環境劣化に、ファッション産業の果たすべき役割とは
セミナーの冒頭では、WWFジャパン 自然保護(淡水・教育・PSP)室長の安村茂樹様より、地球環境の悪化、特に水の環境劣化に対し、ファッション産業の果たすべき役割、貢献できることについてお話をいただきました。
人間を含む生き物にとって水は欠かせない資源の一つですが、繊維産業ではサプライチェーンを通した大量の水使用に加え、水の汚染もとても大きな問題です。(工業用水汚染の17~20%が繊維染色と仕上げによるものと言われているとのこと。)
世界的にサステナブルなものや取り組みに様々な認証が増えてきています。ファッション業界でも、BCIやOCSといったサステナブルな取り組みや認証の認知拡大と浸透、サステナブルな選択が求められると説明がありました。お話の最後には、WWFの取り組み「together possible」についてもご紹介いただきました。
【ポイント③】2021年サステナビリティ・ビジョンを発表し、注目のロンハーマンよりサステナブル推進状況や、新たな取り組みもご紹介
5月末に、サステナビリティ・ビジョンとして「2030年までにCO2排出実質0」を掲げ注目をあびているロンハーマンの根岸由香里様より、自社のこれまでの取り組みとこれからについてお話をしていただきました。
業界内でも話題を呼んだ、「店頭セール廃止」や「プロパー消化率80%目標」などをいち早く宣言し、新たに環境へも配慮する大きな目標を掲げているロンハーマン。これまでの業界の常識と思われていたような習慣や慣例を覆し、環境に配慮しながらも、ファッションを楽しみ、ポジティブにファッションの未来を考える取り組みや想いを語っていただきました。
サステナビリティ・ビジョンでは、①環境を守る、②コミュニティとの関りを深める、③お客さまに幸せを届ける、④チームメンバーの幸福度を高めるという4つの大きな指針を示しており、それぞれの項目での目標/取り組みや達成状況についてもご紹介いただきました。
そして、ロンハーマン上陸当初から取り扱っているブランドORGANIC by JOHN PATRICKとの協業プロジェクト「THE BEAUTIFUL」のご紹介もありました。豊島からは、トレーサブルオーガニックコットン「TRUECOTTON」や、食品廃棄物を利用して染色をした「FOOD TEXTILE」を提供しています。
8月28日(土)よりロンハーマンショップにて販売開始となります。
◆豊島について
1841年創業。180年の歴史の中で、時代の変化に応じて事業領域を拡大。現在では世界各地から原料・糸・生地の買付け・販売や、最終製品の企画から生産管理、納品まで一連のプロセスを手掛けファッション産業のあらゆる過程において総合的に事業を展開しています。また、持続可能なライフスタイル提案企業としてさまざまなサステナブル素材の開発と提供、そしてテックベンチャーへの投資やスマートウェアの開発を推進しています。2019年より、「MY WILL(マイ・ウィル)」をステートメントとし、サステナブル&テクノロジーに対する当社の姿勢を打ち出しています。
https://www.toyoshima.co.jp/
https://my-will.jp