~昔ながらの横丁で駄菓子屋を作りたいグラフィックデザイナーの挑戦~
さかさま不動産の狙い
少子高齢化や人口減少などにより増え続けている空き家。2040年には空き家率は40%を超えると予測され深刻な社会問題となっています。さかさま不動産は、”家主の安心の担保”と”借り手の不安の緩和”を切り口に、物件情報が並ぶ不動産の従来型とは逆で、借り手の目標や想いが並ぶウェブサイト。貸主からアプローチを行い、合意に至れば各自で契約をする仕組みです。事前に借り手の人物像を開示にすることで、流通に乗っていない空き家の発掘や、空き家を介した関係構築を狙う実証実験として2020年6月にサービスを開始させました。
発想のベースはOn-Coが、空き家は街の関わりしろであり挑戦の場として、地域活性に取り組んできた経験です。現在サイト上には「パルクール場を創りたい」「ガソリンスタンドでコーヒースタンドを始めたい」などの夢や想いが綴られています。
HP https://sakasama-fudosan.com/
コロナ禍で生まれた挑戦
成約したのは、名古屋市大門横丁にて街の人の居場所になるような駄菓子屋開業を目指す、グラフィックデザイナー×ひと+まち+かわの記録写真撮影係のあいざわけいこさん(名古屋市)。コロナ禍により、毎回200名程の子どもが楽しみにしていた大門横丁でのイベントが中止。本エリアには公園がなく、日常的に子どもが道で遊ぶ光景を目にしていたことから誰もが気軽に集まれる場を創りたいと考えるようになりました。また予てから大門横丁の空き家化に課題感を抱えていたのもあり駄菓子屋の着想に至りました。
長屋の空き家課題
大門横丁は全長50m程のアーケードがある築約75年の木造長屋。所有者特定や連絡不能の”所有者不明土地”が多い上、連なる構造のため改修が難しいのが現状です。
空き家再生に向けた執念
2021年2月あいざわさんは仲間と共に、横丁の地図を基に空き屋の持ち主調査を開始。5軒は持ち主不明や譲渡不可でしたが、1軒だけ連絡可能な物件を見付けました。長年空き家となり老朽化していた元バーでした。
持ち主は夫の相続整理で物件を入手した三重県在住の女性。あいざわさんから物件購入のオファーをしましたが交渉には至りませんでした。そこであいざわさんは、人柄・活動・想いを知ってもらうべくさかさま不動産に掲載した自身の記事を送付。3日後に「送ってもらった記事を拝見し、素敵な想いで良い活動と思ったので応援したい。ぜひあなたに引き渡したい」と成約へと進みました。
「みんなで駄菓子屋」構想
コンセプトは「みんなで駄菓子屋」。1階は駄菓子屋、2階は子どもたちが宿題を持ち寄れるようなフリースペースとして2021年7月に施工開始。現在あいざわさんの周りでは、コロナ禍で在宅ワークが進み、子育て環境が整ったことによりベビーラッシュが起きており、店番を手伝いたいという仲間も増えているとのこと。また改装はOn-Coが担当。古民家再生に生じる想定外な課題は山積みで、現在も共に臨機応変な対応を重ねています。開業は2021年秋を予定。
巡り合わせ
元バーだった本物件。実は昭和20年代は駄菓子屋だったことが発覚しました。改築工程で壁塗りワークショップを開催するなど、着々と関わる人が増加中。あいざわさんは「独りでは心折れていました。仲間がいたから頑張れています。自分の場ではなく、関わる人みんなの場にしたいです」と振り返ります。
空き家の有効活用が地域活性へ
これまで本サービスを通して夢が実現したのは、書店(愛知県名古屋市)、海洋プラを活用したアート製作場(三重県鳥羽市)開業など計8件の挑戦です。さかさま不動産は人のモチベーションに反応する仕組み。先に借り手の物語を知ることで、貸主だけでなく地域の人たちが、空き家という資源を活用して応援する構図も見えてきました。更に借り手はサステナブル志向が高く、街の余白を埋めるだけでなく、地域の活性化に一役買うという副次効果も生まれています。今後も生まれたての挑戦を可視化し、空き家問題の解決にむけて新たな価値を創造できるよう努めて参ります。
さかさま不動産開始から約1年。9月23日には本サービスを通して起きた現象を報告する会を開催致します。
■株式会社On-Co
代表:水谷岳史/藤田恭兵
所在地:三重県桑名市西別所1375
■本件に関するお問い合わせ
窓口:福田
TEL:080-5984-7800
mail:[email protected]