東京ガス株式会社(社長:内田高史、以下「東京ガス」)は、このたび、水電解装置の低コスト化に向けて、独自の高効率な触媒探索技術を有する米スタートアップ企業H2U(エイチツーユー)テクノロジーズ社(CEO:マーク・E・マクガフ、以下「H2U社」)と、共同開発(以下、「本開発」)契約を締結しました。
脱炭素社会の実現に向け、世界中で水電解装置の開発が進んでいます。その方式の一つであるPEM(*1)水電解方式は、電極に非常に高価かつ供給量が限定的なレアメタルの一種であるイリジウムを使用しているため、イリジウムの代替として、安価でレアメタルを用いない新規触媒の開発が急務となっています。
H2U社が有する独自の触媒探索エンジン(Catalyst Discovery Engine、以下「CDE」) は、高速で水電解触媒を合成し、反応活性を評価できる触媒探索技術です。例えば、従来方式の合成・評価時間は、1個の触媒サンプルあたり3~4日必要でしたが、CDEを用いることで10分程度で実施することが可能です。(*2)
本開発は、CDEとAI(人工知能)を活用することで、最適な触媒材料を効率的かつ迅速に探索します。
東京ガスは、本開発を通じ、低コストで高性能な非イリジウム触媒を開発することで、安価な水素製造コストの早期達成を目指します。なお、水素の用途としては、直接の利活用やe-methane(e-メタン)の原料としての活用を想定しています。
- H2Uテクノロジー社 CEO マーク・E・マクガフのコメント
当社のCDEは、エネルギー供給事業者やグリーン水素製造事業者、水電解装置メーカーにとって、貴金属電極触媒の代替となる高効率、高活性かつ低コストな触媒を開発するのに好適です。現状のグリーン水素の製造コストは高く、希少かつ高価な電極触媒への依存は持続可能とは言えません。東京ガスとの本開発により、手頃な価格でグリーン水素を製造できるようにし、需要家へのグリーン水素の提供を加速できることを非常にうれしく思います。
- 東京ガス株式会社 執行役員 水素・カーボンマネジメント技術戦略部長 矢加部久孝のコメント
H2U社の科学者・技術者とともにH2U社独自の技術であるCDEと人工知能を活用し、レアメタルを用いない安価な水電解装置向け触媒を開発できることをうれしく思います。
東京ガスグループは、グループ経営ビジョン「Compass2030」で掲げた「CO2ネット・ゼロへの挑戦」に向け、脱炭素化に向けた技術開発の早期実現を図り、CO2ネット・ゼロをリードすることで、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」に貢献してまいります。
- 【H2U社の概要】
社名 | H2Uテクノロジーズ社 (H2U Technologies, Inc.) |
代表者名 | マーク・E・マクガフ (Mark E. McGough) |
設立 | 2020年7月 |
事業所 | アメリカ合衆国カリフォルニア州 |
事業内容 | 水電解触媒、水電解装置の開発 |
*1: プロトン交換膜(Proton Exchange Membrane)を用いた水電解装置。
*2: 東京ガスでの試算結果