水・衛生専門の国際NGOウォーターエイドは、3月22日の「世界水の日」から1977年以来の開催となる国連水会議に向けて、各地で発生しているコレラの流行から人々の命を守るためにも気候変動に強く持続可能な水・衛生サービスの構築が重要であると訴えます。
日本において、コレラは歴史の一部、過去のことと思われるかもしれませんが、今も世界の多くの地域ではコレラにより多くの尊い命が奪われています。現在、世界各地で発生している記録的なコレラ流行はその深刻さを増し、世界保健機関(WHO)は警告を発しています。今、もっとも影響を受けている地域のひとつがマラウイやモザンビークなどアフリカ南部地域で、2月に発生したサイクロンの影響を受け、給水・衛生設備が破壊されたり、衛生状況が悪化したりしたことで、コレラ感染数が急増し、多数の死者が出ています。しかし、昔も今も変わらず、コレラ流行の引き金となっているのは、清潔な水、適切なトイレ、そして正しい衛生習慣の欠如です。
コレラは直ちに適切な処置を施さなければ数時間で死に至ることもある致死率の高い水系感染症です。日本国内で初めてコレラが確認されたのは江戸時代後期の1822年と言われ、以降、明治時代にかけて都市部を中心にたびたび流行が起こりました。こうした状況を受けて、上下水道が整備されていった結果、また、公衆衛生の概念が普及されたことで、次第に収束へと向かっていきました。
現在マラウイやモザンビークで見られているコレラ感染は、国境を越えて隣国ザンビアや、さらに遠くアフリカの角-エチオピア、ソマリア、ケニアに及んでいます。最新の報告では、現在、世界22か国でコレラが発生しており、特に水・衛生のインフラが脆弱な地域でコレラの急増が続いています。一方で、事前に水・衛生への取り組みがあったことで被害を免れたケースもあります。
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マラウイのマチンガ県にあるカウィンガ保健センターの医療技術者、フランシス・ントンガさんは次のように述べています。
「ウォーターエイドの支援よって給水設備とトイレが設置されていたのですが、これが今回のコレラの発生を食い止める上で非常に重要でした。以前は手を洗うために川へ行かざるを得なかった患者さんたちもきちんと手を洗うことができたのです。もし以前のような状況のままだったら、大混乱に陥っていたでしょう」[Day 1]
モザンビーク、ニアサ州メカニュラス郡の主席医務官であるギリエルメ・トモ医師は、次のように述べています。
「気候変動は私たちの健康に大きな影響を及ぼしています。雨が多くなると、飲み水が汚れた水と混ざり合い、コレラなどの水を媒介とする病気がまん延します。また、降雨量が少ないことでも、コレラ感染は急増します。過剰な降雨も雨不足もコレラの発生に影響を与えるのです」
トモ医師の医療チームは、この地域の34万人以上の住民をコレラから守るため、予防策を講じています。病院や学校で毎日講義を行い、地元のコミュニティラジオ局で家庭内での衛生行動の重要性を訴えるキャンペーンを放送しています。
ウォーターエイドは、3月22日の「世界水の日」からニューヨークで開催される国連水会議に向けて、新たなポリシーペーパー「Ending the water, sanitation and hygiene crisis together(英語)」を発表(後日、日本語版も公開予定)し、各国政府に対して持続可能な開発目標(SDGs)のゴール6である「安全な水とトイレを世界中に」を実現するためのビジョンを打ち出し、実行していくことを求めています。また、関係者間の調整を改善し、投資や支援の断片化を避けることが重要であると述べています。
かつて日本でもそうであったように、適切な給水・衛生設備がないことが世界中で深刻なコレラ危機を招いています。そして現在、気候変動よる異常気象によってさらに状況が悪化しかねないという脅威にさらされています。ウォーターエイドは、公衆衛生の改善よって予防可能なこの感染症から人々の命を守るためにも、今回の国連水会議をきっかけに水・衛生への投資・取り組みの加速化がもたらされることに期待を寄せています。