『日本企業の経営課題2021』調査結果速報【第5弾】SDGsへの取組状況と課題

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SDGsの認知度が9割超に。取り組み実施企業も7割を超える推進の課題は「具体的な目標・KPIの設定」「取り組みに対する社員の認知度向上」

一般社団法人日本能率協会(会長:中村正己、JMA)は、企業が抱える経営課題を明らかにし、これからの経営指針となるテーマや施策の方向性を探ることを目的に、1979年から、企業経営者を対象に、「当面する企業経営課題に関する調査」を実施しています。今年は2021年7~8月に実施し、517社からの回答を得ました。
今回は第5弾として、SDGsへの取組状況と課題についての調査結果をご報告します。なお、KAIKA研究所所長の近田による「調査結果を受けてのコメント」(本調査のまとめ)を最後に掲載しています。

  • トピックス

1.SDGsを「知っている」経営者が初めて9割を超える
  特に中小企業では昨年から+10.3ポイントの大幅増
2.SDGsに取り組む企業が昨年より10ポイント以上増加し、7割を超える
  中堅・中小企業において、SDGsに関わる取り組みをしている比率が大きく増加
3.SDGsに取り組む目的:「企業の社会的責任を果たすこと」が約9割
  「中長期的な企業価値向上」「株主や投資家からの要請」の重視度が高まる
4.SDGs推進の課題:「具体的な目標・KPIの設定」「社員の認知度の向上」が同率第1位
  「ステークホルダーに対する情報開示の内容や方法」の比率が10ポイント増加
 

  • 「2021年度(第42回)当面する企業経営課題に関する調査」概要

調査時期 :2021年7月20日~8月20日
調査対象 :JMAの法人会員ならびに評議員会社、およびサンプル抽出した全国主要企業の経営者(計5,000社)
調査方法 :郵送調査法(質問票を郵送配布し、郵送およびインターネットにより回答)
回答数・回収率:回答数517社・回答率10.3%
 

  • 調査結果

1.SDGsを「知っている」経営者が初めて9割を超える
  特に中小企業では昨年から+10.3ポイントの大幅増

・国連が提唱しているSDGs(持続可能な開発目標)に対する認知状況について尋ねたところ、「知っている」との回答が昨年よりも9.6ポイント増加して80.1%となりました。また、「知っている」と「ある程度、知っている」を合わせると、SDGsを知っていると答えた経営者が92.9%となり、初めて9割を超えるという結果となりました。【図1-1】

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・従業員規模別にみると、大企業では、「知っている」「ある程度、知っている」の合計が97.5%となっているほか、中堅企業で93.8%、中小企業でも86.8%となっています。特に、中小企業については、昨年よりも10.3ポイントの大幅増となっており、SDGsに対する経営者の認知が一層、広がっていることがわかります。【図1-2】
・投資家からESG経営への取り組みが求められるようになり、また、地方創生の一環として、各自治体が地域におけるSDGsの普及に取り組んでききたことが影響しているものと考えられます。

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2.SDGsに取り組む企業が昨年より10ポイント以上増加し、7割を超える
  中堅・中小企業において、SDGsに関わる取り組みをしている比率が大きく増加

SDGsに関わる活動の取り組み状況について尋ねたところ、2021年は、「具体的な目標を設定して取り組んでいる」企業が30.4%(昨年比+5.2ポイント)、「具体的な目標の設定はしていないが、SDGsに沿った活動を行っている」が44.1%(昨年比+7.6ポイント)となりました。両者を合わせると、SDGsに取り組む企業が昨年より10ポイント以上(+12.8ポイント)増加し、7割を超える(74.5%)という結果になっています。 【図2-1】

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・従業員規模別にみると、「具体的な目標を設定して取り組んでいる」と「具体的な目標の設定はしていないが、SDGsに沿った活動を行っている」を合わせ、SDGsに関わる取り組みをしている比率が、大企業では90.9%と9割を超えています。また、中堅企業では昨年より17.4ポイント増加して76.8%、中小企業では16.1ポイント増加して55.4%となっており、中堅・中小企業において、SDGsに関わる取り組みをしている比率が大きく増加していることがわかります。 【図2-2】前項で見られたように、SDGsへの認知度が毎年、広がっていることが、各社における具体的な活動へと発展していることがうかがえます。

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3.SDGsに取り組む目的:「企業の社会的責任を果たすこと」が約9割
  「中長期的な企業価値向上」「株主や投資家からの要請」の重視度が高まる

・項目2の設問で、「具体的な目標を設定して取り組んでいる」または「具体的な目標の設定はしていないが、SDGsに沿った活動を行っている」と回答した企業(385社・全体の74.5%)に対して、SDGsに関わる取り組みの目的として重視していることを尋ねたところ、2021年は、「企業の社会的責任を果たすこと」について、「非常に重視している」「重視している」の合計が87.3%と約9割に達し、最も重視度が高い項目として挙げられました。
・その他、「中長期的な企業価値を向上させること」(81.8%)、「企業ブランドを向上させること」(68.3%)、「社員のモチベーションや帰属意識を高めること」(64.4%)についても、「非常に重視している」「重視している」を合わせた比率が高めになっています。
・また、昨年に比べ、「非常に重視している」「重視している」の合計で、「株主や投資家からの要請に応えること」が+5.4ポイント、「中長期的な企業価値を向上させること」が+5.0ポイントと、重視度が高まっています。昨今、ESG経営への関心が集まるなか、SDGsの取り組みを中長期的な企業価値の向上に結び付けたいという意向が高まっていることがうかがえます。

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4.SDGs推進の課題:「具体的な目標・KPIの設定」「社員の認知度の向上」が同率第1位
  「ステークホルダーに対する情報開示の内容や方法」の比率が10ポイント増加

・項目2の設問で、「具体的な目標を設定して取り組んでいる」または「具体的な目標の設定はしていないが、SDGsに沿ったを行っている」と回答した企業(385社・全体の74.5%)に対して、SDGsに関わる取り組みを進めていくうえでの課題を尋ねたところ、2021年は、「取り組みについての具体的な目標・KPIの設定」と「自社の取り組みに対する社員の認知度向上」について、「課題である」との回答(おおいに ~ やや の合計)が84.6%となり、同率で第1位に挙げられました。
・「社内推進体制の構築」「戦略との統合やマネジメントシステムへの実装」についても、「課題である」との回答(おおいに ~ やや の合計)が8割を超え、上位の課題となっています。
・また、昨年に比べると、「ステークホルダーに対する情報開示の内容や方法」が「課題である」との回答(おおいに ~ やや の合計)が、約10ポイント増加しています。その他、「既存の事業活動との結び付け」「戦略との統合やマネジメントシステムへの実装」についても、昨年からの増加が大きくなっています。
・SDGsに関わる取り組みが具体的に進むなか、その推進に向けた課題が多様化していることがわかります。

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  • 調査結果を受けてのコメント 一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 所長 近田高志

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・今回は、日本能率協会が毎年実施している「経営課題調査」の2021年度の調査結果速報の第5弾として、2030年のゴールに向けて、具体的な活動が広がっているSDGsの取組状況や課題についての調査結果をご紹介しています。

・まず、SDGsの認知度については、これまでも増加傾向にありましたが、今回の調査ではついに9割を上回るという結果となりました。また、SDGsに沿った活動を行っている企業の比率も7割を超えています。特に、中堅・中小企業において、その比率が大きく高まっていることからも、SDGsの取り組みの広がりが良くわかります。

・SDGsに取り組む目的における重視点としては、「企業の社会的責任を果たすこと」が高いことは当然として、「中長期的な企業価値を向上させること」が上位に挙げられ、かつ、昨年からの増加が高くなっていうことに注目したいと思います。
・第1弾のリリースでご紹介したとおり、経営課題として、「事業を通じた社会課題の解決」を重視する比率が高まっていますが、SDGsに関わる取り組みが、その具体的な方策として位置付けられていると言えるでしょう。

・また、目的として重視されていることとして、「株主や投資家らの要請に応えること」の比率が高まっているとともに、推進の課題において、「ステークホルダーに対する情報開示の内容や方法」の比率が増加していることも興味深い結果です。
・ESG経営が注目されるなか、株主や投資家からもSDGsへの取り組みへの関心が高まっており、企業としても、SDGsの取り組みをどうアピールしていくかが課題となっているようです。
・そうしたステークホルダーからの期待に応え、説明責任を果たすことも重要ではありますが、既存の事業活動とも結び付けながら、自社のSDGsの取り組みに対する社員の認知度を高め、結果として、中長期的な企業価値の向上を実現していくためにも、そもそも、何のためにSDGsに取り組むのかという目的を再確認することが重要ではないでしょうか。
 

  •  回答企業の概要

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