- 千葉大学のサステナビリティレポートについて
千葉大学は国際規格ISO14001を学生主体で取得、継続しており、その運用を学生の実務教育の機会ととらえています。2004年度から発行している環境報告書(2019年より「サステナビリティレポート」)も、環境ISO学生委員会の学生が編集長・副編集長を務め、学生が手分けして原稿の構成・取材・執筆・校正を行って原案を作成しています。今年は16人の編集部、48人の執筆担当者、2人のデザイナーの学生が関わって制作しました。
本レポートは9月30日に大学のWebサイトにて公開したほか、冊子でも制作しました。
「千葉大学サステナビリティレポート2021」(PDF)はこちら
https://www.chiba-u.ac.jp/general/approach/environment/
冊子は印刷会社の方でFSC認証(注1)の用紙や植物油インキの使用など、印刷の工程における環境配慮が行われました。また、印刷・製本に使用する電力(316.99kWh)は、千葉大学の環境配慮に伴う「レジぶー基金」(注2)を使って、バイオマス発電(注3)のグリーン電力(注4)を購入しました。
- エネルギー消費量などに対するコロナ禍の影響
オンライン化による削減分よりも、附属病院におけるコロナ患者治療等による増加分が上回る
2020年度の千葉大学の総エネルギー投入量は前年度比 1.4%増となりました。増加の主な要因は、千葉大学全体のエネルギー消費の45%程度を占める医学部附属病院において、コロナ患者の治療のためにICU(集中治療室)等がフル稼働したことに加え、新築の中央診療棟が本格的に稼働を始めたために、前年度比11.6%増となったことです。附属病院を除く主要4キャンパスの合計は、コロナ禍で授業などのオンライン化が進んだことなどから、前年度比6.6%減少しました。
オンライン化により紙の使用量や廃棄物排出量は大幅に減少
2020年度は、メディア授業の増加と会議等のオンライン化が進んだため、紙類(A4 換算)購入量は前年度比29.9%減少(附属病院を除く主要4 キャンパスは34.3%減少、附属病院は4.0%増加)となりました。
また、一般廃棄物排出量は前年度比16.4%減少(附属病院を除く4 キャンパスでは前年度比24.9%減少、附属病院では6.4%減少)でした。
- 特集:新型コロナウイルス感染症に対応した一年を振り返って
2020年度は新型コロナウイルス感染症への対応が迫られた一年となりました。附属病院では2020年2月に1人目のコロナ患者さんを受け入れてから、「可能な限り通常診療も続ける」を方針に、病院一丸となって未知のウイルスと闘う日々が続きました。教育現場では大学、附属小学校、附属中学校においてオンライン授業の導入が進みました。学生の課外活動が大幅に制限された2020年度でしたが、環境ISO学生委員会ではオンラインや非対面でできることを考え、SDGsに取り組む活動を続けました。
- 長期ビジョン「千葉大学は2040 年までにRE100 達成を目指します」
昨年度のサステナビリティレポートで、千葉大学は2040年までに、消費電力量のすべてを再生可能エネルギー電力で賄うこと(RE100)を目指すことを宣言しました。
千葉大学は、2004 年度に環境マネジメントシステムの運用を開始し、2005 年1 月に国際規格ISO14001 を取得、2013 年にはエネルギーマネジメントシステムの国際規格ISO50001 を取得しました。これらのシステムを運用する中で、様々な方法で省エネに取り組んできました。その結果、近年はエネルギー消費量が減少傾向にあり、その傾向を今後継続していった場合、2040年には約30%の電力消費量の削減となります。再生可能エネルギーとして建物屋上などに太陽光発電設備を徐々に導入していますが、いまだ電力消費量の1%未満の発電量にとどまっています。千葉大学では、2040 年までに建て替える予定がある建物は、延べ床面積ベースで約9%、大規模改修の予定がある建物は約51%となっています。今後は、建て替えや大規模改修の際にZEB(注5)化を進めるなど、さらなる省エネルギーと再生可能エネルギー設備の導入に努めます。また、再生可能エネルギーの主力電力化のためにさまざまな研究に取り組み、その成果を普及します。不足分は外部から再生可能エネルギー電力を購入することによって、2040 年までに学内の使用電力の全てを再生可能エネルギーで賄うことを目指します。
- 各章の主な内容
はじめに
環境・エネルギー方針、長期ビジョン、SDGsと千葉大学の意識、学長からのメッセージ、特集:新型コロナウイルス感染症対応、千葉大学の環境マネジメントシステムの概要など
第1章 総合大学としての特色を活かして~SDGsに貢献する人材の育成~
SDGs・環境に関する最先端の研究、大学での環境教育、附属学校における環境教育・活動など
第2章 サステナブルキャンパスを目指して~4つの柱で快適なキャンパスライフを~
「脱炭素」「循環型」「自然共生」「安心安全」の4つの側面からの環境やSDGsへの取り組みと環境負荷に関するデータ、大学に関連する事業者の環境配慮活動について
第3章 千葉大学が誇る学生主体の環境活動~大学から、地域・社会・世界へ~
特集:コロナ禍における学生の取り組み、企業と連携した取り組み、地域社会との交流など
第4章 誰一人取り残さない社会の実現に向けて〜SDGsの社会的側面の取り組みについて〜
ダイバーシティ推進、教育・研究における社会的な取り組み、学生のボランティア活動など
第5章 環境・エネルギーマネジメントシステムの運用状況
内部監査、環境目的・目標の達成度評価、法規制の順守状況、物質収支、環境会計など
第6章 環境報告書の基本項目
第三者意見、環境報告ガイドライン対応表、編集後記
- 編集長のコメント
環境ISO学生委員会 サステナビリティレポート2021編集長 谷口明香里(園芸学部3年)
本レポートで特に力を入れた点は3つあります。1つ目は、特集ページの強化です。コロナウイルスが私たちに与えた影響は大きく、附属学校を含めて教育や医療に大きな変化がありました。千葉大学がそれにどう対応したかについて記載しました。2つ目は新設キャンパス・建物の紹介です。昨年度から今年度にかけて、墨田サテライトキャンパスの運用開始や医学系総合研究棟、松戸キャンパス内の図書館とさまざまな建物が新しくなりました。各施設の特徴やそこでどのような専門教育が行われているのかを紹介しました。3つ目は本レポートのデザインです。SDGsを意識して、17の目標に対応した活動を掲載し、各ページでどのSDGsの項目に対応しているかが分かるデザインとしました。
また、本レポートの編集作業を通して、計画を立てることの大切さや、編集部員への仕事の割り振りの仕方などを実践的に学ぶことができました。この経験を今後の活動に活かしたいと思います。
- デザイナーのコメント
千葉大学大学院融合理工学府創成工学専攻デザインコース 博士前期課程1年 宮脇愛美
「千葉大学サステナビリティレポート2021」では、千葉大学が変わりゆく社会情勢に合わせて様々な活動を行ってきたことが伝わるようなデザインを目指しました。テーマは「成長」と「循環」で、植物をモチーフに表現しました。また、カラーには昨年度に引き続きSDGs カラーを意識して使用しています。これからも訪れるであろう様々な困難にも、大学や私たち学生が、成長しながら柔軟に対応していくことができたらと思っています。
- 用語集
(注1)FSC認証
適切な森林管理が行われていることを認証する「森林管理の認証(FM認証)」と森林管理の認証を受けた森林からの木材・木材製品であることを認証する「加工・流通過程の管理の認証(CoC認証)」の2種類の認証制度です。NPOであるFSC(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)が運営する国際的な制度です。
(注2)レジぶー基金
千葉大学では環境ISO学生委員会の発案により、2006年度から千葉大学生協においてレジ袋の有料化(1枚5円)を実施しています。これにより、これまでレジ袋の購入に充てられていたお金と、レジ袋の販売収入を「レジぶー基金」として生協から拠出いただいています。集まった基金で学生委員会がさまざまな環境活動を実施して、レジ袋削減にご協力いただいた学内の学生や教職員に対し還元しています。
(注3)バイオマス発電
バイオマス発電とは、木材や植物残さ等のバイオマス(再生可能な生物資源)を原料として発電を行う技術のことです。原料は、木質系、農業・水産系、食品系など生物由来の幅広い有機物です。燃焼した場合にも化石燃料と同様にCO2が発生しますが、植物はそのCO2を吸収して生長し、バイオマスを再生産するため、トータルで見ると大気中のCO2の量は増加しない(カーボンニュートラル)と見なすことができます。
(注4)グリーン電力・グリーン電力証書
グリーン電力とは再生可能エネルギーで作った電気のことで、発電された電気としての「環境価値」を備えたものです。グリーン電力の環境価値を証書化して、「グリーン電力証書」として取引する仕組みがあり、証書を購入した企業などは、自らが使用する電気が再生可能エネルギーによって発電されたものとみなすことができます。
(注5)ZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)
快適な室内環境を実現しながら、建物で消費するエネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことを指します。
- 過去の実績
千葉大学の環境報告書/サステナビリティレポートは、過去4回(2007年、2015年、2018年、2019年)、優れた環境報告書等や環境経営レポートを表彰する「環境コミュニケーション大賞」の環境報告書部門において、環境配慮促進法特定事業者賞を受賞しています。
2015年度 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000015177.html
2017年度 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000249.000015177.html
2018年度 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000335.000015177.html
2019年度 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000398.000015177.html
- 千葉大学環境ISO学生委員会とは
千葉大学において学生主体で環境活動を行っている学生団体。千葉大学がISO14001の取得に動き出した2003年に発足し、2005年の取得以後も、大学の環境マネジメントの運営組織の一部としてEMSの運営を担ってきました。毎年1~3年生まで約200名が所属。内部監査員や環境報告書の作成のほか、エネルギー班、紙班、ごみ班、堆肥化班、学内緑化班、構内美化班、学外教育班、環境報告書班など、活動の内容に応じて20ほどの班や担当があり、環境負荷削減の意識啓発活動や、小中学校幼稚園への環境教育活動、緑化や堆肥化といった活動、エコグッズの作成など、幅広い活動を行っています。近年ではSDGsの達成を目指して、企業と連携したプロジェクトもいくつか実施しています。また、2009年にNPO法人格も取得し、NPO法人として企業と協力して里山保全活動を行ったり、地域の学校へ環境出前授業を行ったりしています。
公式サイト http://chiba-u-siso.xrea.jp/chibasiso/
- 本件に対するお問い合わせ先
千葉大学環境ISO事務局
[email protected]
Tel:043-290-3572
◆千葉大学の環境への取り組み
https://www.chiba-u.ac.jp/general/approach/environment/index.html
https://www.keiyobank.co.jp/ir/eco_project/chiba_u_csr.html