方言や言語の多様性を尊重することは異文化間コミュニケーションの出発点
レポート・論文の書き方を学ぶ「アカデミック・ライティングII」(担当教員は犬塚優司、孟達来、姜英淑)の受講生39名と教職員5名が参加しました。
講演会は音声学・方言学を専門とする姜英淑准教授の企画・司会によって進行され、講堂に集まった学生はオンラインにて視聴しました。
この日の講演は、窪薗氏の著書の『通じない日本語』の内容を中心に行われ、鹿児島県生まれの同氏の日本各地、および留学先での異文化体験を交え、世代間・地域間の異文化コミュニケーションから方言と教育まで幅広い話題が取り上げられました。窪薗氏は講演の中で日本語は一つの言語とは言えないほどの多様性を持っており、若者言葉や方言など、世代差や地域差が大きいために日本人同士でもお互いに通じないことがよくあると指摘し、日本の社会ははじめから多文化共生社会・多言語社会であり、それゆえ異文化間コミュニケーションを学び、多文化共生社会を体験する環境は、日本国内の日常的な生活の中に整っており、異文化間コミュニケーションの基盤は日本語の中で培うことができると力説しました。
最後に、コミュニケーションを円滑にするために方言を排除するという考えは、世界に共通語があればコミュニケーションが楽になるため日本語を排除することに等しいと述べました。そして、方言や世界の少数言語が消滅の危機にさらされている現状の中で、方言教育こそ社会の多様性を守り、差別のない社会を目指す全人教育であると、学生たちに強く訴えかけました。
「方言を教育に活かすにはどうしたら良いか」という学生からの質問に対して、窪薗氏は「地域の人を教室に招いて話をしてもらったり、方言で演劇をしてみてはどうか」とアドバイスしました。
島根県出身の大野伽琉愛さんは、「大学に進学してから、標準語で話すようにしていたが、今日の講演会を通して、方言も自分のアイデンティティであると気づいた。人や自分の方言を受け入れるのと同じように、異なる国の言語や文化も受け入れたい」と話しました。