経済産業省が推進する「『未来の教室』STEAM ライブラリー事業」にて、難民の半生をVR技術を用いて疑似体験するデジタル教材をWELgeeとクロスフィールズが開発
本取り組みは、中高生がVR映像を通じて社会課題の現場を疑似体験することで、SDGsや社会課題に対する探究心を深め、チェンジメーカーになるための主体的な学習を支援することを目的としています。
WELgeeはこれまで、難民一人ひとりの個性や持ち味を活かしたキャリアプログラムなど、難民問題に新しい切り口でアプローチしてきました。
今回、クロスフィールズのコンテンツパートナーとしてWELgeeがその作成に携わったデジタル教材「難民の生き方から『自分が人生で大切にしたいこと』を考える」は、難民として母国を離れ、新しい国で困難に直面しながらも、必死に生き抜こうと歩むひとりの難民の半生を疑似体験することを通じて、自分とは異なる他者の視点から物事を捉え、理解しようとする想像力を働かせることと、他者の置かれた立場や状況に立つ感性を育くみ、難民となった人の生きる姿勢に触れ、人生において大切にしたいことについて考えることを学習目標としています。
- 教材の内容
WELgeeによるコーディネートを通じて、難民申請者のジョセフさん(仮名)に取材協力をお願いし、母国コンゴ民主共和国での日常生活や日本での暮らしについてお話いただき、その内容や取材の模様をVR映像として撮影・編集しました。
本教材は、以下の3部で構成されています。
① 第1部「「難民」は自身と変わらない”人”であることを知る。」
母国での暮らしを追体験するVR映像を視聴し、ジョセフさんにとって「大切なこと」を考え、自分との共通点を見つけるワークを通じて、普段は遠く感じる難民と自分との距離を縮める、というワークを想定した教材です。
② 第2部「難民になる過程で失ったことを知る。」
VR映像とジョセフさんへのインタビューを視聴することを通じて、ジョセフさんが難民になる過程で失った様々なことをできるだけ具体的に想像し、「難民」と呼ばれる人々が置かれている立場やその心境に想いを馳せる、というワークを想定した教材です。
③第3部「困難の中でも前に進む難民の姿から、守り続けた考え方や大切にしたいことに目を向ける。」
VR映像とジョセフさんへのインタビューを視聴し、ジョセフさんの今後の展望や目標、守り続けた考え方や大切にしたいことに触れることで、視聴している側が、自分自身の人生でもっとも大切にしたいことについて改めて真剣に考えてみる、というワークを想定した教材です。
- NPO法人クロスフィールズ代表理事小沼大地氏より
コロナ禍で社会科見学の中止も相次ぐなか、子どもたちが社会課題に実際に触れ、当事者の立場を想像するような機会をつくれないか。そんな想いで、テクノロジーを活用して社会課題を疑似体験する「共感VR」という事業に取り組んでいます。 今回はWELgeeさんとともに、「一人の難民の生き様」をテーマに教材を制作しました。今回の教材を通じ、1人でも多くの方が難民の方々を自分と変わらない一人の人間であると認識し、彼ら・彼女たちの立場を想像しながら物事を考え行動するきっかけになれば幸いです。社会課題を自分事として捉える人を増やす活動に、今後も様々なNPO/NGOの方々とともに取り組んでまいります。
- NPO法人WELgee代表理事渡部カンコロンゴ清花より
手の中にスマホがある日常では、以前よりも世界のニュースは簡単に得られます。一方で、画面の向こうの自分とは関係ない課題だとも感じがち。今回の教材は「難民問題を学ぶ」教材ではありません。難民として逃れざるを得なかった人が、困難に直面しながらも、前に進み、生き抜こうと歩むプロセスを疑似体験することにより、自分自身の人生に置いて大事にしたいことは何か、どんな風に生きたいかを考えることを目的にしています。言葉も文化も異なる日本でのスタートを「自分だったら?」と想像する授業を経験することで、遠く起きている大変な出来事ではなく、世界と自分が実は繋がっているということを考え始めるきっかけとして、活用していただけたら嬉しいです。
- 経済産業省『「未来の教室」STEAMライブラリー事業』の概要
経済産業省「未来の教室」が学びのSTEAM化・PBL(Project Based Learning: プロジェクト型学習)を推進するために、2021年3月1日にオープンしたWebサイトです。
https://www.meti.go.jp/press/2020/10/20201027002/20201027002.html
- NPO法人クロスフィールズの概要
クロスフィールズは、国内外の社会課題の現場とビジネスパーソンをつなぐことで、社会課題解決とリーダー育成の両方を実現することを目指す非営利組織です。社会課題解決の現場に企業の社員が飛び込み、現地のNPOや社会的企業とともに課題解決に取り組む新興国「留職」プログラムのほか、国内外の社会課題の現場を「体感」する経営幹部・役職者向けのプログラム「社会課題体感フィールドスタディ」などの事業を展開しています。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、既存事業を大きく見直すとともに、現在の状況に対応した様々な新規事業を行っています。
- NPO法人WELgee(ウェルジー)の概要
日本に逃れた難民とともに未来を築く団体です。難民認定が厳しい日本で、一人ひとりがキャリアや人生の目標を追求できる道筋を、多様なセクターとの協働を通じて目指します。難民人材の強みを、日本企業のダイバーシティ推進・イノベーション創出に生かす人材紹介サービス「JobCopass」、日本に逃れた多国籍な「アンバサダー」たちから、世界を学び、自分を知る、社員育成の場である「企業研修」を運営しています。