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~6月は「環境月間」。エシカル消費でイメージするのは「環境」「SDGs」「地産地消」「フェアトレード」など~
CCCマーケティング株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:田代誠)は、食の領域を中心とした生活者のエシカル消費に関してさまざまな視点で研究開発し、その成果を発表していく「エシカル消費研究会」の第3回目(https://note.com/note_ethicalfood/n/n0f16621fda80)を、2022年5月31日に流通・メーカー・専門家の方々に参加いただきオンラインで開催いたしました。今回、エシカル消費に関する消費者インタビューから、消費者がエシカル消費を行うきっかけや、エシカル消費に対する意識の兆しを見て取ることができました。
- 第3回「エシカル消費研究会」のサマリ
・「SDGs」の消費者認知率は82.8%。2021年より30.6ポイントの大幅上昇
・「エシカル」の認知率も11.1ポイント上昇し、32.9%とジワリ認知が拡大
・消費者が「エシカル消費」からイメージするものは、「SDGs」「環境」「地産地消」「フェアトレード」など
・消費者にとって「現在か未来」に「自分か他人」に価値や便益があるかがエシカル消費の実行のカギ
・学校教育による知識やライフステージによる価値観の変化がエシカル消費のきっかけに
「エシカル消費研究会」は、CCCマーケティングが取り組む共創型プラットフォーム「Tカードみんなのエシカルフードラボ」(https://ethicalfoodlab.tsite.jp)の中に位置づけられる研究会で、企業、教育機関、自治体などあらゆる方々と共創しながら、食の領域を中心とした生活者のエシカル消費について研究していくことを目的としています。
- 第3回「エシカル消費研究会」の参加者 ※五十音順
・味の素株式会社
・株式会社こだわりや
・ハウス食品グループ本社株式会社、ハウス食品株式会社
・株式会社ファミリーマート
・明治ホールディングス株式会社
・河口真理子さん(立教大学・不二製油グループ本社株式会社)
・佐々木ひろこさん(一般社団法人Chefs for the Blue)
・中村優吾さん(九州大学 大学院システム情報科学研究院 助教)
・山本謙治さん(株式会社グッドテーブルズ) ほか1社
■エシカルフードに関する消費者インタビュー
6月5日は国連が定めた「環境の日」です。日本では、環境庁が6月の1カ月間を「環境月間」として、さまざまな取り組みを行っています。その環境月間に先駆けて実施された第3回目の「エシカル消費研究会」では、エシカルフードに関する消費者インタビューを実施し、消費者がエシカルフードに対しどのように感じているのか、その価値構造を定性的に把握した結果を発表いたしました。消費者インタビューは、エシカルを意識して食品を買うことがある人に対し、1人60分の個別インタビューをオンラインで実施しました。
■エシカル消費からイメージするものは「SDGs」「環境」「地産地消」「フェアトレード」など
2022年3月に発表した「エシカルに関する実態調査2022」(https://www.ccc.co.jp/news/2021/20210316_002305.html)にて、「SDGs」の認知率が昨年の52.2%から82.8%と大きく伸長をした一方で、「エシカル」の認知率も昨年から11.1ポイント上昇し、32.9%との結果となり、ジワリと「エシカル」の認知が広がり始めていることが分かりました。そのような中、今回実施した消費者インタビューにおいても、「エシカル消費」のイメージや「エシカル消費」に関わる消費者の行動・考え方も見えてきました。まず消費者が「エシカル消費」を理解した行動・考え方として「地産地消」「フェアトレード」「フードロス(回避)」「応援/支援消費」などが挙げられました。また「エシカル消費」のイメージとして挙がった概念は、「環境」「SDGs」「自然」「オーガニック」などがありました。「エシカル」は概念としては範囲が広く定義が曖昧で分かりにくいものの、今後は「エシカル消費」の普及に向けて、消費者がイメージできるよう統一概念の浸透を図っていくことも必要と考えられます。
■消費者にとっての「エシカル消費」の価値とは?「自分に受けられる便益」と「他社に向けられる便益」の2つ。
消費者インタビューによって、エシカルフードを買うことに対しての消費者の便益は以下の2つがあることがわかりました。
1.自分に向けられる便益(利己の便益)
2.他者に向けられる便益(利他の便益)
この場合の「他者」とは、人や組織(特に社会的に弱い立場にいる人や組織)、地域、または地球全体など、幅広くとらえられています。例えば、包材に関して分解しやすい包材であったり過剰包装でない商品であることに対して、「自分に向けられる便益(利己の便益)」としては、面倒な分別が不要、ゴミ出しが楽、それによって生活が快適になる、といった便益があります。一方「他者に向けられる便益(利他の便益)」は、ゴミが減る、有害なガスが出ない、それによって環境によい、といった便益があります。どちらか片方だけが知覚されているのではなく、この両輪が揃ってはじめてエシカルフードの消費者便益が成り立っています。また、「他者に向けられる便益(利他の便益)」が満たされることで、『社会貢献できる喜び』『ちょっと誰かの役にたてた満足感』などといった、情緒的な便益となって「自分に向けられる便益(利己の便益)」にも変換されていました。
■生活者は、「エシカル消費」に対する2つの便益を、「現在」と「未来」の2つの視点で意識
これらの便益は、インタビューの中で以下の2つの時間軸とともに認識されていることが分かりました。
1.現在・短期的な視点
2.未来・長期的な視点
「現在・短期的な視点」は、今現在に便益を享受できるものや、現在存在している課題の解決に繋がるものです。たとえば、おいしい、安い、ゴミ捨てが楽、といった利己的な便益の他、地域経済の活性化など利他的な便益もあります。一方、「未来・長期的な視点」は、現在すぐに享受できる便益ではないが、将来的に発生する便益のことです。たとえば、将来の健康や、自分の子供たちが暮らしやすい環境の維持といった利己的な便益の他、気候変動への対処等すぐに効果の現れるものではない利他的な便益があります。
これらを整理すると、下の図のような4象限の消費者視点があります。
消費者は、この象限のどこか1つのみを意識しているわけではなく、濃淡のグラデーションはありながら複数の領域を意識している人が多くみられました。どの領域を強く意識しているかは個人ごとに異なり、さらに個人の中でも商品カテゴリによって異なると考えられます。
■エシカルフードを購入するきっかけはどこに?生まれ育った環境やライフステージの変化が起因
また、消費者インタビューから、エシカルフードの購買に至るまでの段階として、以下のような構造が見られました。
消費者の意識や行動の変容プロセスとして、生まれ育った環境の中での食習慣や養育者の考え方、学校教育、ライフステージの変化によって地方から都会に引っ越した時のギャップや一人暮らし、家族など、生活環境や価値観の変化が生まれます。そこからきっかけ、定着へと進むステップで二つのパターンが見られました。ひとつは、仕事や天災、病気など偶発的な体験により自分事化したエシカルな課題を発見し、その課題に貢献する消費行動が定着するパターンです。もうひとつは、利己の便益を理由に買っている商品が、実はエシカルな課題に貢献する商品である、「利他の価値」もある商品だったことを知った時、自身の行動の承認・肯定が得られたと感じて消費行動が定着するパターンです。
今後エシカル消費の普及に向けては、フードチェーン全体の情報戦略による基盤の強化、消費者価値のバランス設計、「利他の価値」を伝えるコミュニケーションなどが方策として考えられます。
■第3回「エシカル消費研究会」での研究結果をもとに発せられた参加者からのコメント
<メーカー企業>
利己と利他の話は、この研究会の前から注目していた。消費者価値=お客様価値が大前提じゃないかと感じている。エシカルな商品で価格が高くなっても買おうとなる時、利他の価値が動機になるのか、人によっては利己の価値なのかが気になった。
<流通企業>
刺さった言葉は「応援消費」。小売としてお客様に共感してもらわないと難しいので、ここをどうくすぐれるか?最初は、フルエシカルは難しいので、プチエシカルで週1や、月1でそこについて考えてみる、というのがやれることなのかな。気がついたら、プチエシカルが役に立つと気づいてもらい、このお店やるじゃん!というように、プチエシカルブームを作って、ムーブになるストーリーが小売のできることだと思った。
<専門家>
利他的なことをすると、自分の満足度が上がる、つまり人間はいいことをするとドーパミンが発生する、幸せになる、脳科学的に。情緒じゃなくて自分として心地よいという、本人の満足度が高くなるという解釈の仕方もある。利己と利他が相反するということよりは、自己満足を高めるために利他をする考え方もあるかなと思った。
「エシカル消費研究会」では、引き続き今回得られた知見の定量的な確認を進め、エシカル消費の普及に向けて研究してまいります。