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クラスメイトと育む 津久井在来大豆と地域への郷土愛
令和4年6月下旬から7月上旬にかけて、相模原市内の複数の小学校において、3年生が「総合的な学習」の時間を活用し、「幻の大豆」と言われる『津久井在来大豆』の種まきを行いました。地元産の大豆を児童自らが育て、収穫・加工までを体験することで、食育や地産地消などを学ぶとともに、地域への愛着の醸成やSDGsの推進を図ります。
この取組は、約20年前に根小屋小学校が、近隣に暮らす「豆の会」の石井好一さんに津久井在来大豆の種の提供を依頼したことから始まりました。地元産の大豆を授業に取り入れることで、児童たちに「食」の大切さを伝えるとともに郷土愛を深めてもらうことを目的に、現在では市内の複数の小学校で実施されています。
取材を行った橋本小学校、根小屋小学校では、種のまき方、育て方について「豆の会」の石井さんから直接レクチャーを受けたのち、児童一人ひとりが種を手に持ち、実際に種まきを行いました。めったに見られない大豆の種を見た子どもたちの目はキラキラ輝いていました。
児童たちは、石井さんの注意を守りながらも思い思いのスタイルで種まきを行い、「出来上がりが楽しみ!」という声があちこちから聞こえてきました。また、上手に育てるためのコツを質問するなど、熱心に授業に取り組んでいました。
【橋本小学校児童のコメント】
「農家の人は暑いときでも畑を一から耕したり、土作りをしたりととても大変だと思いました。」
「津久井の農業を元気にしたいという石井さんの思いを聞いて、すごいなと思いました。」
「私もきれいな大豆を作って生産量を増やしたいと思ったので、これからも大切に育てていきます。」
「農業は大変だと思ったけど自分たちで作った物を食べるのははじめてなのでとても楽しみです。」
「これから大豆を工夫して世話をして、収穫できたら味噌をつくってみたいです。」
「昔は大豆を育てる人が少なく、先輩に教わりながら始めたのを聞いてびっくりしました。」
【橋本小学校 先生のコメント】
「相模原市には昔から作り続けられている大豆があるの?」子どもたちの疑問を大切にしながら学習を進めています。「大豆のことをもっと知りたい」「大豆を育てたい」という声が聞こえてきたので、石井さんに相談し、「津久井在来大豆」を育てる活動を計画しました。大豆を世話する中で生まれてくる疑問を子どもたちが調べたり、体験したりすることでまた新しい疑問が生まれ続ける学習にしたいと考えています。そして、長年大豆を作り続けている石井さんの「思い」を知り、「私たちが住んでいる地域っていいな!」「私たちも何かしてみたいな!」など、子どもたちの素直な思いを育めるようにしていきたいと思います。
【根小屋小学校児童のコメント】
「いつも食べている野菜やごはん、大豆もこれだけ苦労して農家さんたちが作ってくれているということを学びました。今まで食べ物を残しても誰かがすぐ作ってくれると考えていましたが、今は、農家さんの苦労やSDGsのことを考えると、残してはいけないなと思えるようになりました。」
「大豆を育てるコツや、これからどんな活動をすれば良いか学ぶことができました。また、石井さんから津久井在来大豆の魅力を聞き、絶対においしい大豆を育てて、相模原中、日本中に広げていきたいと思いました。私たちが、津久井在来大豆で地球の未来を救います!」
【根小屋小学校 先生のコメント】
3年生の子どもたちは、自分たちが住む相模原市の未来を明るいものにしたいと強く思っています。地球の未来も救いたい。だからこそ、SDGsを達成し、相模原市の魅力も日本中に届けられるものとして調査し、探し当てたのが「津久井在来大豆」でした。自分たちで栽培し、そのおいしさや素晴らしさを広げたいと考えた子どもたちの本気の気持ちは、大人の心も動かします。「津久井在来大豆」がどう広がっていくのか。これからの子どもたちの活躍が本当に楽しみです。
「豆の会」石井好一さんのコメント
最初は津久井の農業を元気にするためにと、津久井在来大豆の栽培を始めました。地元の小学校からこの取組のお話しをいただき、子どもたちが作った大豆を通じて、家庭にも津久井在来大豆の存在を知ってもらうことができています。今後も、こうした活動を通じて、津久井在来大豆の存在を知ってもらいたいです
両校では、引き続きこの体験の中で、児童たちへ食育や地産地消への学びを深めるとともに、「津久井在来大豆」に対する理解や相模原市への郷土愛の醸成と、SDGsの推進を図組を実践していきます。
- 津久井在来大豆
相模原市緑区の千木良(ちぎら)地区を中心に、県内で古くから栽培されてきた甘くて美味しい大豆。昔はこの地域を津久井郡と言ったことから、「津久井在来大豆」という名前に。第2次世界大戦前には県内の多くの農家が栽培していたが、その後、輸入大豆に押され、栽培面積が減り「幻の大豆」と呼ばれるまでに生産量が落ち込んだ。
平成20年に「かながわブランド」に認定され、大豆の甘さを活かした加工品等の販売が徐々に増えてきている。