UNDP報告書、度重なる危機により、世界の9割の国で人間開発が後退と警告

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人間と地球の未来のためには、グローバルな麻痺状態の脱却と開発への道筋への復帰が急務

2022年9月8日 – ニューヨーク発: 世界は次々と危機に襲われ、その火消し作業に追われる中で、私たちが抱える困難の根本的原因に対処できないでいます。大きく方向転換をしない限り、私たちはさらに深刻な困窮や不公正に向かっていってしまうおそれがあると、国連開発計画(UNDP)は新たに発表した報告書の中で警告しました。

UNDP報告書、度重なる危機により、世界の9割の国で人間開発が後退と警告のサブ画像1_Photo - UNDP AngolaPhoto – UNDP Angola

UNDPが本日発表した人間開発報告書の最新版、「不確実な時代の不安定な暮らし:激動の世界で未来を形づくる(Uncertain Times, Unsettled Lives: Shaping our Future in a Transforming World)」は、不確実性が幾重にも重なり合い、絡み合うことによって、これまでにない形で暮らしが不安定になっているのではないかと論じています。この2年間で、コロナ禍やウクライナ戦争のような危機が立て続けに発生し、それが社会と経済の大転換や地球規模の危険な変化、分極化の大幅な拡大と相まって、世界中の何十億という人々に壊滅的な影響が及びました。

UNDPはこれまで32年にわたり、各国の健康や教育、生活水準の指標として人間開発指数(HDI)の算定を行ってきましたが、この指数が世界平均で2年連続して低下したことは、これまでありませんでした。しかし今回、人間開発は2016年の水準にまで落ち込み、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けてこれまでに成し遂げられた成果も、多くが後退してしまいました。

この後退はほぼ全世界的に生じており、2020年か2021年のどちらかでHDIが低下した国は全体の90%以上に達しているほか、2年連続でHDIが低下している国も40%を超えており、多くの国で、この危機がさらに深刻化している様子がうかがえます。

すでに復興の兆しを見せている国もあるとはいえ、復興にはばらつきがあり、しかも断片的であることから、人間開発の格差はさらに広がりつつあります。中でもラテンアメリカ・カリブ、サハラ以南アフリカ、南アジアの各地域は、特に大きな打撃を受けています。

アヒム・シュタイナーUNDP総裁は「世界は度重なる危機への対応に四苦八苦しています。生活費の高騰とエネルギー危機を受け、化石燃料に対する補助金など、間に合わせの対策に関心が向きがちな中、目先の救済策を行うことで、本来なすべき長期的なシステム変革が遅れている様子も見られます。私たちは集団的な麻痺状態に陥り、このような変革ができなくなっているのです。不確実な世界の中で、私たちはグローバルな連帯感を取り戻し、相互に絡むあう共通課題に取り組む必要があります」と語っています。

報告書は、必要とされる変革がなぜ起きていないのかを詳しく検討したうえで、それには多くの理由があるのではないかと述べています。その中には、不安全感と分極化が相まって、あらゆるレベルで危機に対処するために必要な連帯や協働が妨げられているということもあります。例えば、今回の算定結果を見ると、最も強い不安全感を抱えている人々は、極端な政治的意見を持ちやすいことが分かります。

アヒム・シュタイナー総裁は、さらに「コロナ禍発生前から、私たちは、不安全感と分極化を伴う進歩という2つのパラドクスを見てきました。そして今、世界人口の3分の1が圧力を感じ、他人を信頼する人の数が全世界の3分の1に満たない中で、私たちが人と地球のためになる政策を進め導入しようとしても、大きな障害が立ちはだかっています。この示唆に富む新たな分析は、私たちがこの行き詰まりを打開し、現在のグローバルな不確実性から抜け出すための新たな道筋を描くことを目的としています。私たちのシステムを再起動させ、断固とした気候変動対策を実行に移し、あらゆる人が新しい機会を得られる未来を確保できる余地は、残りわずかです」と述べています。

報告書はこの新たな道筋を描くために、再生可能エネルギーからパンデミック予防に至るまでの投資と、社会保障を含め、社会が不確実な世界の浮沈に備えられるようにするための保険を重視する政策の実施を提言しています。その一方で、イノベーションも技術、経済、文化など多くの側面で、これから生じる思いがけない課題に対応する能力を高めることができます。

報告書の主筆者であるUNDPのペドロ・コンセイソン氏は「不確実性を切り抜けてゆくために、私たちは人間開発をさらに重視し、人々の豊かさや健康の向上より一歩先を見据えなければならなりません。この2つが重要であることに変わりはありません。しかし私たちは、この地球を守りながら、人々が安全感を高め、自らの人生の主導権を回復し、将来に希望が持てるよう、必要なツールを提供する必要があるのです」と語っています。

2022年人間開発報告書と、新たな複合的不確実性への対処に関するUNDPの分析について、詳細は、https://hdr.undp.org/human-development-report-2021-22 (英語)をご覧ください。

  • UNDPについて

UNDPは貧困や格差、気候変動といった不正に終止符を打つために闘う国連の主要機関です。170か国において、人間と地球のために総合的かつ恒久的な解決策を構築すべく、様々な専門家や連携機関からなる幅広いネットワークを通じ支援を行っています。

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