国内外の有識者らと多様な視点で灯台の未来や利活用について語り合う「海と灯台サミット2022」を開催しました!

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全国灯台文化価値創造フォーラムは、150年以上海の安全を守り続け、今その役割が広がりつつある灯台の奥深い魅力や新たな可能性について有識者らが多様な視点から語り合うイベント「海と灯台サミット2022」を11月5日、WITH HARAJUKU HALLにて開催いたしました。
当日は、国内外の専門家や有識者・子ども博士・文化人らと映像や中継を交えて行われたトークセッションだけでなく、日本各地の灯台を繋ぎ現地の方とあらゆる視点から地元の灯台に関する取り組みを紹介するリレー中継も行い、全国へ向けたライブ配信も実施。灯台の役割が広がりつつある中で、未来にどのような価値を創造できるか語り合い、新たな施策づくりに生かすことを目的として、様々な角度から活発に意見が交わされました。このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

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  • イベント概要

・開催概要:「海と灯台サミット2022」
・日程  :2022年11月5日(土) 
・開催場所:WITH HARAJUKU HALL
・参加人数:約830人
・主催:全国灯台文化価値創造フォーラム
・共催:日本財団 海と日本プロジェクト

■日本財団 会長挨拶:笹川陽平会長

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日本財団 笹川会長は日本の灯台第一号である三浦半島・観音埼灯台から中継で登場すると、その歴史や灯台そのものへの想いを述べて、「灯台を中心に様々な社会的、文化的な遺産がたくさんあると思うが、そういうことも皆さんで話し合われたら嬉しく思います。灯台は歴史あるいは文化、そして私たち日本人にとってかけがえのない海洋文化資産だが、あまり知られなくなってきています。もう一度これを皆様方とともに話し合って理解を深めていきましょうというのが、日本財団 海と日本プロジェクトの1つなので、有意義な時間を過ごしていただければ幸いです。今日は灯台の過去から現在、未来に向けて灯台を中心に活発にお話が進むことを期待しています。」とサミット来場者への期待を話し、日本財団と文藝春秋の共同で制作された書籍「海と灯台学」についても紹介しました。

■海上保安庁長官挨拶:石井昌平長官

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また、海上保安庁 石井長官はビデオメッセージで登場し、「本日のサミットは、灯台の未来がテーマと聞きました。灯台の保守や管理は、以前は灯台守と呼ばれた私どもの職員が、灯台の敷地に住んで行っていました。その後、遠隔監視の技術を導入するなどして合理化を進め、全国の全ての灯台の無人化が16年前に完了しました。地域の皆様の力を借りて、灯台は守り、育てられています。昨年には法律改正もして、灯台のペンキ塗りや錆落としなどの簡単な修繕であれば、地域の皆様にも行って頂ける制度を新しく作りました。その制度に基づき既に20を超える団体を指定し、それらの団体には灯台についての構造や設計の図面などの情報も提供するなどして、その活動を支援しています。本日のトークセッションでは、様々な分野、年代の方々に、灯台の未来について話し合って頂くと聞いています。灯台について本来の役割に加えて、新しい価値が見い出され、地域の皆様、地域を超えた皆様にさらに注目していただけるきっかけの一つとなれば、大変ありがたく思います。」とご挨拶をいただきました。
 

  • トークセッション①灯台に与える 映像・メディアの力

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2021年度に引き続き、今年もBS特番「中村獅童の灯台見聞録」(※)に出演し、歌舞伎役者の中村獅童氏と共に各地の灯台を回り取材を行ったフリーアナウンサーの笠井信輔氏とパネリストの不動まゆう氏、たかまつなな氏が、「海と人との関わりの中で灯台が果たす価値や役割」について、異分野であるメディア・映像の観点から語り合いました。また、「中村獅童の灯台見聞録」で主役を務める中村獅童氏、現代アーティストの小松美羽氏からのビデオメッセージも上映されました。仕事で訪れた後、プライベートでも灯台を訪れるようになったという笠井氏は、番組のロケを振り返って灯台それぞれが異なる役割を持っていることに着目し、「巡る楽しさを教えてくれた」と感想を話しました。さらに、日本には登れる灯台が16灯台あることに言及すると「カップルで訪れて登る体験を共有するデートスポットとして灯台を活用できるのでは。」と利活用のアイデアが飛び出す場面もありました。

さらに、笠井氏は番組で訪れた灯台の1つ男木島灯台がアニメや漫画の聖地巡礼スポットになっていることを例に「新しいメディアと力を合わせることで灯台観光の新たなきっかけ作りになる。」と話しました。また、トークセッションの感想を訊かれたパネリストのたかまつ氏は「これまで灯台を役割としてしか見ていなかった。映像があることで地域における灯台の存在・歴史・文化・構造・周囲の特徴まで見られるのが映像の良さだと思う。灯台に行くときは映像を見てから訪れたい。」と語り、メディアと灯台が持つ可能性に期待が高まるトークセッションとなりました。
(※)「中村獅童の灯台見聞録」https://toudai.uminohi.jp/todai-week2022/movie.html

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  • トークセッション②世界の灯台は、どこに向かうのか?

フランスからの灯台有識者や空間デザイン・場のリノベーションの専門家、インスタグラムで人気のキャンプインフルエンサーらをゲストに迎え、世界の人々の、灯台に対する海洋文化遺産としての捉え方を語り合い、そこから日本の灯台利活用の可能性について活発な議論が交わされました。

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フランス海洋博物館 灯台専門キュレーターであるギグノー氏からは、海外の灯台のこれまでの歴史や現状を踏まえて、その利活用について実際の画像を用いてご紹介頂きました。また、不動氏からはすでに日本の灯台で実施されている取り組みも紹介されましたが、一方で「まだまだ灯台への宿泊は難しい」という課題点も挙がりました。イギリスやカナダなどで宿泊施設に活用されている事例をうけて、YADOKARI株式会社代表取締役の上杉氏からは、課題解決×空間デザインを得意とする独自の視点から「灯台のレストランで食事を楽しんで車で周遊するツーリズム」、「灯台のある場所は思い出のフラグシップがある。観光と掛け合わせることで良い可能性が見出せる」などのアイデアが飛び出し、登壇者らのクロストークは盛り上がりをみせました。

また、キャンプインフルエンサーのむー氏は「灯台の近くでキャンプをする魅力」を提案。灯台をキャンプグッズであるランタンに例えて、灯台は海を照らす巨大なランタンとして海に関わる人を照らす灯りであることを語りました。トークセッションの感想について訊かれた不動氏は「宿泊施設として灯台でゆっくりとした時間を過ごすことで、灯台を通して休日の新しい味わい方を新しく見出せるのではないかと思う。」と、灯台の新しい価値について述べました。

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  • トークセッション③灯台という物語を未来に届ける                    

物語の力でいかに灯台を未来に残せるか、というテーマで日本財団 海野光行常務理事に加え、文藝春秋「オール讀物」で11月号から連載がスタートした灯台を巡る紀行随筆「灯台を読む」を担当する作家らが登壇。紀行文を作成する中で作家自身が各々訪れた灯台を例に挙げ、明治建築、郷土史など文学の多角的な視点も交えて、物語が灯台にどのような影響を与えられるかを語りました。

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まず安部龍太郎氏は自身の灯台訪問について「歴史も人も両方に焦点を当てて執筆した」と語り、灯台をよく知ることでその土地の歴史や地理・航海条件がクリアに見えると解説しました。さらに日本財団 海野常務理事からは、安部氏の紀行文に登場する禄剛埼灯台の名前の由来が常夜灯として狼煙を上げていた歴史にあると解説されました。
次に阿部智里氏は、灯台が必要なロケーションに立てられていることを踏まえ、海の安全と灯台の歴史の関係性について語りました。そして、1890年にエルトゥールル号遭難事故でトルコと日本の友好の架け橋となった樫野埼灯台に訪れた体験について、現地の人々とのコミュニケーションを通して、その場で話を聞いたからこそ分かった事故当時の様子を語りました。
一方、これから灯台を訪れるという門井氏は、文学者としての役割は「既に知られている知識と知識をつなげることでもある」と時代小説「竜馬がゆく」の著者である司馬遼太郎を例に挙げて述べ、灯台を「灯台文化」としてとらえる期間が来ていると話しました。

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作家の3名の話を聞いた日本財団 海野常務理事は、「先生方が独自のフィルターを通して灯台を見ることで、私たちも灯台そのものに入りやすくなる。一般の方々にもそれを伝えるためのプロジェクトを、先生方と力を合わせて手掛けていきたい。」と話しました。
 

  • トークセッション④子ども博士が考える灯台の未来学                   

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このセッションでは、船・地理・お城の分野で専門家顔負けの知識を持つ子ども博士の3名をゲストに、それぞれの分野の知識も織り交ぜながら灯台の価値や魅力の掘り下げ方について語り合いました。
まず、中学1年生のお城博士 栗原響大くんは、海城(うみじろ)と呼ばれ海沿いに位置していた「今治城」を例に挙げて、天守が味方の船にとってシンボル的な役割だった歴史を解説し、灯台との多くの共通点を紹介しました。続いて、中学2年生の海博士 萩原一颯くんは自身が大好きな魚を紹介しながら、魚採集時に近くにあった野島埼灯台に行ったエピソードを話してくれました。話を聞いたパネリストのたかまつ氏は「海の生き物に興味を持たれているので、そこから灯台との関わりについても教えてもらえたら。」と期待を語りました。
また、17歳の航空写真博士 鈴木陽心くんは、地理の視点から灯台についてプレゼン。灯台が写った航空写真をスライドに投影しながら、「灯台には立地条件があり工業都市付近の灯台は海上輸送に役立っていると分かる。」と気付きを教えてくれました。    

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さらに、子ども博士の3名は事前に出されていた宿題「灯台の未来をどう考えるか?」というテーマに対してそれぞれの答えを発表。栗原くんは、灯台をたくさんの人に知ってもらうという観点から、例えば伊達政宗を全面に押し出している仙台城のように、「灯台守などの灯台に関わった人々を前面に押し出す取り組みによって市民の心の拠り所になってくれたら。」という想いが聞かれ、会場は拍手に包まれました。
萩原くんは、波力発電や風力発電の仕組みを灯台に組み込んで発電して電気船に電気を供給する、灯台の発電・給電ステーション化のアイデアを話してくれました。
また、鈴木くんは「「灯台めぐり」として神社のご朱印めぐりのように、それぞれ特色のある灯台のある日本各地の景色をブランド化して観光バスなどを誘致し、SNSなどを活用してブームをつくる。」と大人顔負けの提案をし、灯台の未来について若い世代の斬新なアイデアが飛び出すトークセッションとなりました。
 

  • 灯台利活用への視点:日本財団 常務理事 海野光行

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日本財団 海野常務理事は、「海と灯台プロジェクト」を始めた想いとして、「灯台と地域、灯台と周辺施設があまりつながっていなかったこと、さらに、灯台は、バラバラで分断されていて、灯台同士がつながっていないと感じられ、灯台をつなげたかった。灯台の利活用も重要だが、そもそもの土台として灯台のネットワーク作りが必要」と語りました。

そのうえで、まだまだ一般の人にとって旅の目的地になっていない灯台の利活用について、①それぞれの灯台が持つ奥深いストーリーの磨き上げ、②異分野・異業種との連携による新しい視点の投入、③分かりやすい、インパクトと話題性という3つの視点が必要だと述べました。

さらに今年度から12地域と連携して開始された「灯台の利活用に関するモデルづくり」においては、生地鼻灯台で計画されている官舎跡や倉庫を整備した漁村文化を体験できる取り組みや、恵山岬灯台で予定されている「灯台サウナ実証実験」の取り組み、また来春に予定される灯台への熱い想いを自治体の方々と議論し合う「海と灯台のまち会議」が紹介され、「灯台をいろいろな視点で発掘すると、様々な価値や利活用の可能性があり、それらを大切に使いながら、海洋国家日本として、灯台を資産として次世代に引き継ぐ努力をしていきたい」と灯台利活用への展望を話しました。
 

  • 海と灯台サミット特設ギャラリー

海と灯台サミットの開催に合わせて、会場のWITH HARAJUKU HALL ホワイエでは「よみもの」というテーマで海と灯台サミット特設ギャラリーの展示が行われました。全国の著名な灯台が紹介されたクイズや灯台オブジェのほか、海と灯台の物語や書籍、親子で楽しめる灯台のペーパークラフトや灯台グッズが販売され、見て回るだけで灯台の興味や理解が深まる内容で来場者は足を止めてそれぞれの展示物をじっくり楽しんでいる様子でした。

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<団体概要>

団体名称:全国灯台文化価値創造フォーラム
URL:https://toudai.uminohi.jp/

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海と灯台プロジェクト

人と海は、時間的にも空間的な意味においても「灯台」を境に関わってきました。航路標識として、従来の船舶交通の安全を担うという重要な役割から広がりつつある灯台。その存在意義について考え、灯台を中⼼に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、異分野と異業種、⽇本と世界をつなぎ、新たな海洋体験を創造していくプロジェクトです。海と灯台プロジェクトは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
https://toudai.uminohi.jp/

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日本財団「海と日本プロジェクト」

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/

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