目次
2022年8月9日(火)、9月10日(土)
海ごみの8割は、街から川などを伝って海に流れ出ていると言われています。
「身近な錦川にも、ごみが流れてるの?」
「使い捨てプラスチックを減らさなきゃ!」
山口県では、海洋プラスチックごみ問題を身近に感じてもらい、流域全体で対策に取り組んでもらうことを目的に、今年度、山口県東部の「錦川」の流域において、「やまぐち海のSDGsアクション」を展開しています。
この活動の一環として、2022年8月9日(火)・9月10日(土)の二日間、散乱ごみや漂着ごみ、水生生物を調査する「沿岸アクション」・「内陸アクション」を実施しました。地元の岩国高校の生徒により結成された「海のジブンゴト化サポーターズ」をはじめ、行政や教育機関など、二日間で約50名が参加した活動をリポートします。
□イベント概要/
・開催概要:やまぐち海のSDGsアクションin錦川
・実施日時
[1日目(沿岸アクション)]2022年8月9日(火)9時30分~16時30分
[2日目(内陸アクション)]2022年9月10日(土)9時~15時
・場所
[1日目(沿岸アクション)]錦川下流河川敷(多田渡し付近)、錦川沿岸(第2尾津海岸)
[2日目(内陸アクション)]岩国市街(川西駅〜県道112号線・欽明路道路)、錦川上流(鹿野下潜水橋付近)
・参加者数
[1日目(沿岸アクション)]:26名
[2日目(内陸アクション)]:20名
・ごみ数量(45L袋):[1日目]18袋、[2日目]6袋
・関係機関
主催:山口県
協力:山口県立岩国高等学校、岩国市ミクロ生物館、岩国市、周南市、株式会社丸久、
株式会社エフピコ
調査協力:株式会社ピリカ、岩国市立灘中学校、岩国市立由宇中学校
・詳細URL
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/40/164071.html
- ごみ拾いSNS「ピリカ」を活用し、錦川流域圏のごみの散乱状況を見える化!
今回の調査では、誰でも気軽にごみ拾いの様子を世界中に発信できるSNSサービス「ピリカ」を活用し、錦川の河川敷や岩国市街におけるごみの散乱状況(写真とごみの内訳)をリアルタイムで世界中に発信しました。
※ピリカ(https://www.pirika.org/)で「#海のジブンゴト化」と検索すれば、散乱状況が見える化できます。(SNS上で、写真や地図が確認できる。)
- 1日目(沿岸アクション)
① 散乱ごみ調査:錦川下流を道路沿い・河原・河岸の3ブロックに分けて実施
錦川の下流域において、道路沿い・河原・川岸の3ブロックに分けて調査を開始。ごみを拾う係、写真を撮る係、記録する係、ピリカに投稿する係に割り振って、作業実施。
道路沿いにはペットボトルや食品トレーなど、河原には空き缶やビニール袋など、河岸には水中ゴーグルや虫かごなどと、場所によってごみの性質が異なっていたのが印象的でした。山口県廃棄物・リサイクル対策課担当者からの「例えば道路沿いだと、車からペットボトルを投げ捨てる人がいるのかもしれないなどと、想像を膨らませてみてください」という言葉を受け、参加者たちは改めて「ごみが発生する理由」を考えることに。「海のジブンゴト化サポーターズ」の高校生たちも真剣な表情で拾い上げたごみを見つめていました。
「一見、ごみの無い静かな河川敷から、どんどんごみが見つかった」
「拾ってないと、このごみは海洋プラスチックごみになっていた」
「散乱ごみの多くが、使い捨てプラスチックや製品プラスチックだった」
聞いたことがある話から、現実の事になった瞬間でした。
② 水生生物調査:錦川の豊かさを再認識
ごみの散乱状況を調査した後は、錦川の豊かさ、美しさ、大切さを改めて認識し、ごみ問題と結びつけるために、プランクトンや水生昆虫などの水生生物や水質の調査を実施しました。
岩国市ミクロ生物館・末友館長と岩国高等学校・篠崎先生の指導のもと、「海のジブンゴト化サポーターズ」は網やバケツを手に川の中へと進みます。すくい上げた川の水を太陽の光で透かして見たり、髪の毛の太さよりも細かい目合いのフィルターで水を濾したりと現地での目視による水生生物の観察を行ったほか、岩国高校での顕微鏡観察や市販のキットを使っての水質調査も実施。化学的酸素要求量(COD)、川の水に含まれるアンモニウム態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、リン酸態リンの量を測定しました。生物観察の結果、ヒラタカゲロウ類、ナミウズムシ、カワニナ類、ヒメマルケイソウ、カタマリヒゲマワリなど、比較的きれいな水環境を好む生物やその餌となる生物が中心であることが確認され、また、水質測定の結果もCODが2~4 mg/Lとなるなどそれを裏付ける結果となり、錦川下流の水質階級はⅠ~Ⅱ(きれい~ややきれいな水)であることが確認されました。
③ 漂着ごみと水生生物の調査:錦川沿岸(第2尾津海岸)で実施
錦川沿岸(第2尾津海岸)に移動し、岩国市立灘中学校の生徒4名と合流して漂着ごみの組成調査やマイクロプラスチックの採取、プランクトンなどの水生生物調査も実施しました。
錦川下流と同様に、回収した漂着ごみの情報をピリカに投稿。錦川沿岸には、発泡スチロールの塊や牡蠣養殖パイプなど漁業で使われる物のほか、大量のペットボトルや食品トレーなどのプラスチックごみが多数漂着しており、海で出たごみと街で出たごみが混在していることがわかりました。また、砂浜には多数のマイクロプラスチックが混在していることに気づくことができました。参加者は山口県廃棄物・リサイクル対策課担当者から「海ごみの8割は内陸から」との説明を受け、日頃の生活の中で、「海ごみの予備軍」を意識することが重要と再認識しました。ごみ拾いを終えた灘中学校の生徒たちは回収したごみの多さに驚き、「身近な瀬戸内海に、こんなにもごみがあるなんて想像しなかった」、「海にごみが出ていかないように、街中でごみを捨てないという当たり前のことをしっかりとやっていきたい」と話してくれました。
プランクトン調査からは、種類・数ともに多様なケイ藻類の存在が確認できました。ケイ藻類は別名「海の牧草」とされ、海の生態系を支える重要な存在です。広島名物の牡蠣を含む広島湾の海の幸の全ての命はケイ藻類によって育まれているといって過言ではありません。海には私たちの不注意でごみが多く流れ込んでいることが分かりましたが、一方で、流域の豊かな自然や私たちの暮らしからもたらされる栄養塩や錦川流域から広島湾に至る豊かな自然環境などがケイ藻類を育み、私たちの食卓を潤わしていることを認識しました。
- 2日目(内陸アクション)
① 散乱ごみの調査1:岩国市欽明路道路(川西駅周辺)にて、2班に分かれて実施
1日目同様、拾ったごみの情報をピリカに投稿していきました。今回は市街地での調査であり、タバコの吸い殻やプラスチック食品包装などが多く見られました。また、自治会が設置したごみ箱やアパート住居者用のごみ箱周辺に、ごみが多く散乱しており、ごみ出しのマナーについて考え直すきっかけにもなりました。
まちなかにも、普段は気付かないけど、河川敷や海岸と同様に、至る所にごみが散乱していて、海ごみの予備軍として潜んでいることがわかりました。
ごみ拾いの途中、「海のジブンゴトサポーターズ」の高校生たちに、1日目の活動を終えたのちの行動の変化を聞いたところ、「自分の部屋のごみもしっかり分別するようになった」「できるだけごみを出さないよう、より意識するようになった」との答えが返ってきました。また、欽明路道路に落ちているタバコの吸い殻の多さに衝撃を受け、「ごみゼロに向けてもっと情報発信していくべき」と意見を言ってくれました。
② 散乱ごみ調査2:錦川上流(鹿野下潜水橋)にて実施
①の地点から50㎞離れた、周南市にある錦川上流(鹿野下潜水橋)に移動し、散乱ごみの調査を実施しました。まずは道路沿い、次に川岸にてごみ拾いを行いました。道路沿いでは、タバコ、空き缶、食品ごみ(食品パッケージ)、ドリンクのプラごみが、河岸ではプラスチック製の紐やブルーシート、さらに人目につかない茂みでは農業関係のごみ、小型家電などが見つかりました。
住む人の少ない上流域でも、量は少ないけど、やっぱりごみがある。長い錦川を下って、いつか瀬戸内海に出ていくと考えると、内陸部も他人事ではないと実感しました。
また、「海のジブンゴト化サポーターズ」の高校生たちは、「見つかりにくいところには、不法投棄も多く見られる。つい出来心でタイヤなど処分にお金がかかるものを捨ててしまう」という山口県廃棄物・リサイクル対策課担当者の話に真剣に耳を傾けていました。
③ 水生生物と水質の調査:錦川上流(鹿野下潜水橋)にて実施
錦川上流でも1日目と同じ要領で水生生物と水質の調査を行いました。採水後「コアプラザかの」にて目視や顕微鏡観察を行った結果、下流では見ることができなかったカワゲラ類、ヤマトビケラ類、タルケイソウなどきれいな水環境を好む水生生物を多数発見しました。また、水質階級の判定に挑戦した結果、錦川上流の水は「きれいな水」という結果になりました。
水質調査の結果はCODの値のみ6~8 mg/Lと上流としては高めの数値となりましたが、同環境に長くすむ生物はきれいな水環境を好むものばかりであったことから、調査日やその前日の降雨により周辺の土壌などが流入し、一時的に高い数値となったのではないかと考えました。総じて、錦川上流の水の美しさが証明される結果となりました。
- 活動を終えて
今回実施した「やまぐち海のSDGsアクションin錦川」では、想像以上に多くの散乱ごみ・漂着ごみ・マイクロプラスチックを発見して驚いたとともに、場所によってごみの性質が異なることを学ぶこともできました。日頃、ごみの存在に気がつかないのは、意識が向いていないためだということもわかり、少しでも意識することがごみを減らすための第一歩だと気づかされました。
また、水生生物や水質の調査から、錦川流域の自然や生物の豊かさが広島湾の豊かさも同時に育み、私たちの暮らしもまた豊かにしていることも再認識でき、この美しい川と海を守るためにも、生活ごみなどの海ごみ予備軍は、流域に住む多くの人に意識してもらって、減らさないといけないと改めて考えさせられました。
山口県では、「やまぐち海のSDGsアクションin錦川」の集大成として、12月10日(土)に、連携事業者である㈱丸久の協力を得て、中央フード平田店において、海のジブンゴト化サポーターズと、活動報告を兼ねた普及啓発イベントを開催予定です。
流域のみなさんと一緒になって、瀬戸内海の海洋プラスチックごみ問題を考える機会にできるよう準備を進めています。
また、今後、県HPにおいて、灘中学校、由宇中学校の各校が調査した広島湾沿岸のプランクトンおよびマイクロプラスチック調査の結果も加えた報告を予定しています。
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【参考】
山口県廃棄物・リサイクル対策課ホームページ
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/40/
やまぐち海のSDGsアクション in 錦川
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/40/164071.html
岩国高校ホームページ
http://www.iwakuni-h.ysn21.jp/
岩国市ミクロ生物館
https://micro.shiokaze-kouen.net/