2023年はSDGsの達成期限までの中間年:国際NGOウォーターエイドが、SDGs目標6の進捗を加速させるための政策提言レポートを発表

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SDGsの達成期限までの中間年である今年、水・衛生専門の国際NGOウォーターエイドは政策提言レポート「力を合わせて水と衛生の危機を終わらせる(Ending the water, sanitation and hygiene crisis together)」を発表し、政府、開発パートナー、民間セクターに対し、SDGs目標6達成の障壁を理解し、緊急性を持って優先的に水・衛生に取り組むよう呼びかけています。

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安全な水と衛生設備を利用し、衛生習慣を実践できることは、すべての人に不可欠なものです。経済の発展にも、また公衆衛生の促進やジェンダー格差の是正、気候変動に対するレジリエンスの構築にも、水・衛生は欠かせません。2015年、国連加盟国は17の目標からなる持続可能な開発目標(SDGs)を通じて、2030年までに極度の貧困を終わらせ、持続可能な開発を達成することを約束しました。SDGsの目標6「すべての人に水と衛生を」について、目覚ましい進展を遂げた国・地域がある一方、世界的にみると、その進捗は遅く、不均衡と言わざるをえません。これは特に、後発開発途上国の貧困かつ脆弱な立場に置かれた人々・コミュニティに顕著です。例えば、サハラ以南のアフリカでは、現在のペースでは、2030年までに37%の人しか安全に管理された水を使うことができません。 

このような状況を受けて、このたびウォーターエイドは政策提言レポート「力を合わせて水と衛生の危機を終わらせる(Ending the water, sanitation and hygiene crisis together)」を発表しました。2023年は、SDGsの達成期限までの中間年であり、ウォーターエイドは、政府、開発パートナー、民間セクターに対し、SDGs目標6達成の障壁を理解し、緊急性を持って優先的に水・衛生に取り組むよう呼びかけています。 

水・衛生の取り組みが優先され、より多くの資金が投じられ、すべての人が清潔な水とトイレを利用し、衛生行動を実践できるようになると、今後20年間で開発途上国の経済が数兆ドル規模で改善されることがわかっています。基本的な飲み水をすべての人が利用できるようにするための投資をおこなうことで、年間最大320億ドルの利益を生むことができます。基本的な衛生設備への投資をおこなえば年間450億ドルの利益が生まれる可能性があります。自宅で清潔な水とトイレが使えれば、女性や女の子たちは遠くまで歩いて水をくみにいく必要がなくなり、世界全体の合計で年間7,700万日以上を節約することができます。 

ウォーターエイドはこれまでの20年、国が水・衛生を優先して開発を進めれば、水・衛生の状況が大幅に前進することを目の当たりにしてきました。インドでは、2000年には基本的な衛生設備の普及率が15%だったのが、2020年には71%に上昇しました。ナイジェリアでは、2000年に43%だった基本的な飲み水の普及率が、2020年には73%にまで上昇しています。こうした進展は、水・衛生関連の政策とプログラムが、政府の全面的な支持と指導力を得て、かつ必要な資金が投じられたときに起こります。それに対する開発パートナーや民間セクターの後押しは、進展をさらに加速させることにつながります。 

今回発表した政策提言レポートは、「水・衛生の進捗を加速させるためのガイド」となるものです。本レポートは、水・衛生の進捗ペースの加速を阻む障壁として、政治的リーダーシップの不足、水・衛生関連の省庁などを含む組織体制の不十分な整備と組織の能力不足、資金不足、ジェンダー平等と社会的包摂性に対する配慮の不足、保健セクターによる水・衛生の取り組み不足、維持管理の重要性に関する認識不足、気候変動の適応策としての取り組み不足などをあげています。そしてそれに対して、各国政府が、各国の状況に合わせて実施すべき8つの事項、そして即座に取り組むべきアクションを提示しています。 

例えば提案事項の1つが、「水・衛生に関わる組織体制を明確にして整備する」です。飲料水、衛生設備、衛生習慣はそれぞれ管轄省庁が異なるのが一般的で、農村部と都市部で管轄が違っていることも少なくありません。衛生習慣について言えば、水・衛生、保健、教育、ジェンダー、栄養など、さまざまなセクターや省庁・部門にまたがっているため、「すべてに関係しているが、どこにも属していない」ということになります。その結果、意思決定者や予算保有者が明確な「当事者意識」を欠き、水・衛生が優先されないということが起きています。これに対して、水、衛生設備、衛生習慣に対する組織の義務を国・現地レベルで明確に定めること、そして明確にした組織の役割と責任を下支えするため、法的枠組みの見直し・改定をおこなうことを提案しています。さらに、このような傾向が特に衛生分野で見受けられることから、即座にとるべきアクションとして、衛生設備に関して複数組織間の調整を図るグループを設置し、正式な法的枠組みによる裏付けを与え、計画、責任、リソース配分の決定をおこなうに足る十分な権限を付与することを提案しています。 

今後10年間は、人口の増加や農村部から都市部への移動が続き、さらに気候変動、政情不安、感染症の流行などが深刻な脅威となります。水・衛生は、人々がこれらの複合的な課題に対してレジリエンスを維持できるようにするために不可欠です。  

政策提言レポート「力を合わせて水と衛生の危機を終わらせる(Ending the water, sanitation and hygiene crisis together)」はこちら

https://www.wateraid.org/jp/publications/ending-water-sanitation-hygiene-crisis-together-policy-priorities-progress
 

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