~ 新たに8か所で特性評価の確認申請が了承されました ~
現在、国内の水産業は、海洋環境の変化や資源管理不足による資源量の減少、収益率の低下や各種運営課題による従事者の減少、高齢化などによって、産業としての継続性が危ぶまれております。そのような中、新たな働き方、収益源を生み出す取組みとして、三倍体化したマガキのシングルシード養殖が広がっております。
この三倍体マガキのシングルシード養殖は、殻の形が整っており、貝柱が太く、かつ身入りも充実していることが求められる「殻付き生ガキ」の育成に適しており、国内だけでなく海外向けの輸出を促進することにも貢献しております。特に、国際市場においては季節販売ではなく、通年販売を求められるケースが多い為、三倍体であることを指名してくる向きもあります。
また、三倍体マガキは配偶子が少なく、かつ性成熟期が通常の二倍体マガキと比べ大きくずれる為、限りなく子孫を残しにくい、という特性があります。これは、養殖海域に元々いたマガキと交雑個体を残しにくいことを意味し、遺伝子汚染による地域固有特性の消失やこれに伴う特定疾病の感染拡大を防ぐことに繋がることから、SDGsで提唱されている「海の豊かさを守ろう」という目標達成にも貢献します。
以上のような背景を受け、今年うみのでは以下の申請者の方々のお手伝いをさせていただき、無事全ての方の申請が了承されましたのでご紹介いたします。
雅がき組合 (京都府) 海域:舞鶴湾東部
山口県漁業協同組合 才川支所 (山口県) 海域:周防灘下関市沿岸
山口県漁業協同組合 東和町支所 (山口県) 海域:周防大島町真宮島沿岸
池田漁業協同組合 (香川県) 海域:小豆島池田湾沿岸
鳴門町漁業協同組合 (徳島県) 海域:鳴門市うちの海
和田島漁業協同組合 (徳島県) 海域:小松島市和田島町沿岸
福岡市漁業協同組合 唐泊支所 (福岡県) 海域:福岡湾西部
佐伯市漁業協同組合 名護屋支所 (大分県) 海域:猪串湾および名護屋湾
うみのでは、これまでも徳島県県南沿岸域、三重県的矢湾、千葉県木更津市および富津市沿岸、兵庫県瀬戸内海沿岸域、大分県佐伯湾大入島、宮崎県宮崎市および日南市沿岸において水産庁に対する特性評価の確認申請のお手伝いをさせていただき、いずれも了承を得てまいりました。その結果、各生産者の出荷高増に貢献するほか、一水産による阿波はじめ牡蠣(徳島)、株式会社オイスターファームラフトによる伊勢志摩プレミアムオイスター(的矢)、新富津漁業協同組合による江戸前オイスター(千葉)、津田宇水産株式会社や泉水産、矢竹水産による取組み(兵庫)、株式会社ひとしおのひとしおオイスター(宮崎)といった生産者固有の名称を冠した殻付き生ガキが販売されるに至り、各方面でご好評いただいております。
うみのでは、今後も種苗の供給を中心とした多面的な支援体制を構築し、国内養殖業の進化発展を支えていきたいと考えております。牡蠣好きの皆様におかれましては、ぜひ上記産地の牡蠣にご関心、ご支援を寄せていただき、ご賞味いただいた感想などを生産者の方々にお寄せいただけますと幸いです。
※三倍体マガキとは
染色体のセットを基本となる数(生物によって異なる)の3倍もつマガキ。牡蠣類はヒトと同じく通常二倍体だが、受精卵にストレス処理を施すことで人為的に作出することができる。不稔性を示すため夏でも食べられる牡蠣ができる他、交雑が起きないことから遺伝的多様性の保全にも有効。海外では全生産量の3割が三倍体で賄われているとも言われている。三倍体の産業利用事例としてはバナナや種無しスイカなど。シジミやギンブナ等は野生個体の中に元来三倍体であるものがいるなど、水生生物には非二倍体の生物も多い。
<うみの株式会社について>
うみの株式会社は、「人と海を科学で豊かにする」ことを理念とし、水産用種苗の製造販売のほか水産や海洋に関連する商材の開発研究・製造受託サービスなどを提供しております。
URL:https://umi-no.jp/
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