グラスゴー金融同盟が「アジア太平洋地域ネットワーク」を立ち上げ、域内の金融機関によるネットゼロ移行を支援

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シンガポールを拠点とする地域特化型の新たなネットワークが、アジア太平洋地域のネットゼロ・ファイナンスの拡大を支援し、ネットゼロ・エコノミーへの移行を加速

【シンガポール – 2022年6月8日】 2050年までに温室効果ガス排出量のネットゼロを目指す金融機関のグローバル連合であるグラスゴー金融同盟(GFANZ)は本日、「GFANZ アジア太平洋(APAC)ネットワーク」の設立を発表しました。さらに、同地域で初となる事務局と諮問委員会を設立することにより、アジア全体でのネットゼロ・アクションを促進させることを明らかにしました。

世界が気温上昇を抑えるためには、アジア太平洋地域において、低炭素エネルギーや再生可能エネルギーへの投資を促すことが重要です。国際連合が推進するキャンペーン「Race to Zero」によると、世界のネットゼロ移行を進め、気候変動の最悪の影響を回避するためには、同地域において、この10年間に13.6兆米ドルの投資が必要だとされています。

GFANZは、このような取り組みを加速させるため、APACネットワークを立ち上げ、同地域の金融機関や政策立案者の皆様との連携を強化することで、フィードバックを取り入れ、ネットゼロに関する取り組みが包括的ですべての方が適用できることを目指します。同ネットワークは、ネットゼロの機会と課題に関する相互の知識共有とオープンな対話を可能にし、真にグローバルなグリーン移行を実現するものです。GFANZのグローバルな活動や成果を向上するために、APACネットワークでは、同地域の企業や関係者の皆様の視点や専門性を反映させるとともに、GFANZがグローバルで進める研究や取り組みを、アジア太平洋地域特有のユニークで多様なニーズに合わせて適応させることを検討します。

GFANZのAPACネットワークは、グローバル・パートナーおよびローカル・パートナーによってサポートされます。シンガポールに新設した事務局は、シンガポール取引所(SGX)、シンガポール政府系投資会社のテマセク・ホールディングス、シンガポール金融管理局(MAS)からの支援を受けています。また、同ネットワークの責任者には、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)でアジア太平洋地域を担当した経験を持ち、新たにGFANZのディレクターとなった、安井友紀氏が就任します。安井氏は、マーク・カーニー氏、マイケル・ブルームバーグ氏、メアリー・シャピロ氏、ナイジェル・トッピング氏らで構成されるGFANZのリーダーシップチームと、新たに設置されるGFANZのAPAC諮問委員会のもとで指揮を執る予定です。

諮問委員会は、アジア太平洋地域の気候変動や金融分野の有識者の皆様で構成され、APACネットワークに対して、戦略的方向性、地域特有の専門知識、作業計画や成果を監督する立場として、指導や助言を提供します。また、諮問委員会には、MASの長官で、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)の議長でもあるラビ・メノン氏が議長を務め、民間、公共、市民社会の各セクターから気候変動関連ファイナンスの専門家らが参加する予定です。諮問委員会には、以下のメンバーが参加します。

  • アジア開発銀行(ADB) 専務総局長 ウーチョン・ウム氏
  • アジアインフラ投資銀行(AIIB) 総裁兼理事会議長 金立群氏
  • Climateworks Centre 最高経営責任者(CEO) アンナ・スカルベック氏
  • KB金融グループ 会長兼CEO ユン・ジョンギュ氏
  • シンガポール取引所(SGX) CEO ロー・ブンチャイ氏
  • 国連事務総長 特使(革新的ファイナンスと持続可能な投資担当) 水野弘道氏

諮問委員会には、今後、さらに多くの専門家の皆様をメンバーに迎え、地域やセクターの多様性や公平性を高めていく予定です。これにより、GFANZのAPACネットワークが、同地域の代表として、経済や政策の状況について代弁していく立場になるよう、確認していきます。これには、まだ2050年のネットゼロ目標を設定していない金融機関を支援し、関連するアライアンスと連携して、どのような状況においても、科学的根拠に基づいた目標設定とネットゼロへの移行計画の採用を促進することが含まれます。さらに、地域ごとのエンゲージメントを高め、施策実行を支援するべく、アジア太平洋地域の各国に事務所を置き、国ごとの支部の設立を目指していきます。このような国別支部の設立は、同ネットワークにとって不可欠な存在となるでしょう。

GFANZは、今後数か月間で、アフリカおよびラテンアメリカにおいても、地域特化型のネットワークを立ち上げる予定で、事務局スタッフはGFANZのグローバルな特性を反映し、すべての主要大陸に配置される予定です。これらのネットワークにより、すべての地域の専門知識と視点がGFANZの活動に組み込まれるだけでなく、ネットゼロへの移行に必要な資金調達が、世界のあらゆる場所で最優先事項となることが保証されます。新興国や発展途上国での実施支援に重点を置き、ネットゼロに沿った金融の発展を支援する取り組みは、GFANZのグローバル・パートナーであるUNEP FIやPRI(責任投資原則)にも共通するもので、緊密に連携して行われます。気候災害を回避するためには、すべての地域が協力して経済の脱炭素化を進め、世界の金融システムがネットゼロへの移行に必要な資金を提供する必要があります。GFANZは、その活動、会員、事務局において、世界のすべての地域が十分に組み込まれるよう、引き続き取り組んで参ります。

「アジア太平洋地域の金融市場は、世界中のサステナブル投資の成長を加速させることに貢献しました。クリーンエネルギーへの投資が期待でき、急成長している経済圏を有するこの地域は、気候変動に立ち向かうグローバルでの取り組みにおいて、重要な役割を担っています。GFANZ APACネットワークとその諮問委員会は、同地域のリーダーシップとイノベーションを活用することに役立つでしょう」- GFANZ共同議長 マイケル・R・ブルームバーグ氏(国連気候変動対策特使)

「世界は、資金なしには気候変動に対処することはできません。同様に、世界の金融システムは、アジア太平洋地域の金融機関のリーダーシップなしには、その公正な役割を果たすことができません。我々の新しいAPACネットワークと諮問委員会、そしてシンガポールに設立した事務局は、アジアの金融をGFANZの中心に据え、このグローバルな課題の解決に向けて、貢献していきます」 – GFANZ共同議長 マーク・カーニー氏(国連気候変動対策・金融特使)

「ネットゼロへの移行は、エネルギーシステムの構造、金融市場、金融機関の機能に大きな影響を与えます。APACネットワークと諮問委員会の立ち上げは、GFANZの活動が真のグローバルな視点を反映するうえで重要なマイルストーンとなります。私たちは、金融機関および各国政府がネットゼロ移行計画の実行能力を高める中で、パリ協定に基づいたビジョンの達成を支援するために、 アジア太平洋地域の国々と連携していくことを期待しています」 – GFANZ副議長兼気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)事務局長 メアリー・シャピロ氏

「アジアは、世界がネットゼロに移行するための鍵を握っています。金融は、アジアが効果的かつ包括的なネットゼロへの移行を達成するための強力な成功要因となり得ます。GFANZ APACネットワークの設立は、まさに時宜を得たものです。気候変動への対応に必要な規模でグリーンファイナンスを促進するためには、金融業界と金融規制当局が積極的に協力することが必要です。アジアの金融機関が信頼できる移行プロセスを描き、気候関連リスクを管理するとともに、グリーンファイナンスにおける革新的なソリューションを開発して、アジアをネットゼロに向けて前進させることを支援するために、GFANZとNGFSがパートナーシップを拡大していくことを期待しています」 – シンガポール金融管理局 ラビ・メノン長官

「世界中の金融機関の参加とコンセンサスがなければ、世界のネットゼロへの移行を加速させるという我々の目標を前進させることはできません。私は、メンバーを支援し、アジア全域の金融機関や政策立案者の皆様と協力して、ネットゼロへのコミットメントに向けた行動を起こしていくことを楽しみにしています」 – GFANZ  APACネットワーク リージョナル・ディレクター 安井友紀氏

「世界が未曾有の困難に直面している今、国境を越えた連携を強化し、決意を一層固め、内向きな衝動を抑えることがますます重要になってきています。私は、GFANZに参加し、ネットゼロ移行に向けた大きな可能性を探るために、多国間の視点を提供できることを嬉しく思います。我々は、コロナ禍からのグリーン・リカバリーを達成し、アジアだけでなく、世界の数十億人の利益のために、気候変動に関する有意義な行動を促進するための気候変動アジェンダを支援していきます」 – アジアインフラ投資銀行 総裁兼取締役会会長 金立群氏

「気候変動は、地域、産業、部門を越えて取り組むべきことで、急速に拡大している課題です。アジア太平洋地域の金融機関、投資家、企業は、同地域の複雑性や経済レベルの違いを考慮すると、気候変動に対処する上で独自の課題に直面しています。我々は、GFANZ APACネットワークの事務局の拠点として、問題を理解して実用的な解決策を共に見出していくために、密接に連携していきます」 – シンガポール証券取引所 CEO ロー・ブンチャイ氏

「世界的な気候目標の達成は、アジアにおける強力なコミットメントなしには不可能でしょう。当社がGFANZおよびAPACネットワークのシンガポール事務局の設立を支援することは、金融業界と実体経済全体で気候変動対策を加速させるための資本を触媒とし、公正な移行を実現するという我々のコミットメントの表明でもあります。我々は、アジアおよび世界におけるネットゼロのアジェンダの推進に貢献するために、今後数か月間にわたり、GFANZとの関係を強化することを期待しています」 – テマセク・ホールディングス CEO ディルハン・ピレイ・サンドラセガラ氏

「アジア太平洋地域は、長年にわたりイノベーション発祥地であり、サステナブル・ファイナンス分野の世界的なリーダーでした。もし、この地域でネットゼロを達成できなければ、世界的に失敗することになるでしょう。我々は、共通の気候目標を達成するために、アジアの金融市場の力を活用しなければなりません。GFANZとともに、行動と実行を促進していけることを楽しみにしています」 – 国連 革新的ファイナンス・持続可能な投資担当特使 水野弘道氏

「気候危機には、国や地域の現実を考慮したグローバルな対応が必要です。PRIは、ネットゼロに向けたAPACネットワークの発足を歓迎します。我々はGFANZやその他のネットワークと連携して、この地域の投資家がネットゼロへのチャレンジに踏み出し、ネットゼロ・エコノミーへの公正な移行の実現を支援することを期待しています」 – 国連責任投資原則(PRI) CEO デビッド・アトキン氏

「金融部門は、アジア太平洋地域全体で、低炭素で気候変動に強い経済への転換を実現するために、重要な役割を果たす必要があります。我々は、GFANZと密接に連携することにより、主要な金融機関を集結し、必要な規模でこの変革の実現を支援して参ります」 – 国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)代表 エリック・アッシャー氏

「GFANZ APACネットワークの発足は、同地域がネットゼロへの競争において重要な役割を担っていることを示しています。APAC地域は、ネットゼロに必要な世界の移行資金の40%以上を提供すると予測されており、域内の金融機関全体で機運を高めることが、実体経済に変化をもたらす上で重要です。当社は、この地域でGFANZと提携し、APACネットワークの設立・拡大を支援し、金融機関と協力してネットゼロへの移行を加速させることを光栄に思います」 – ベイン・アンド・カンパニー 東南アジア地域会長 エドマンド・リン氏

グラスゴー金融同盟(GFANZ)について

GFANZは、2050年までに世界の温室効果ガス排出量のネットゼロへの移行を加速し、地球温暖化を1.5度以下に抑えるというパリ協定の目標達成に向けた、金融機関およびその部門別連合による専門家主導のグローバル連合です。銀行、保険会社、アセット・オーナー、資産運用会社、金融サービスプロバイダー、投資コンサルタントなどの金融セクターから、45カ国における450以上の会員企業を擁しており、世界の民間金融資産の約40%を占めています。

詳細は、https://www.gfanzero.com でご覧いただけます。

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